ビタミンEと卵。良くないという話を耳にしたことありませんか?
卵は日本の食卓に欠かせない身近な食材であり、多くの方が健康を意識して食事に取り入れていることでしょう。それだけに、こうしたネガティブな情報に触れると、本当に大丈夫なのかと心配になるのも無理はありません。
現代は情報過多の時代であり、卵の栄養に関する情報も例外ではありません。「コレステロールが多いから一日一個まで」という説が過去のものとなったように、栄養学の常識は日々更新されています。その中で、「ビタミンEと卵」の関係についても、断片的な情報だけが独り歩きしているのが現状です。
この記事では、たまごにはビタミンEは含まれているのか、もし含まれているなら含有量はどのくらいなのか、といった基本的な疑問から、市場でよく見かけるビタミン強化卵やDHA強化卵との違い、さらには卵のビタミンDとビタミンEはどっちが良いのかという比較まで、多角的に解説を進めます。
また、有精卵が気持ち悪いと感じる心理的な背景や、ビタミンEのとりすぎや体質的に合わない人の注意点についても詳しく触れていきます。
この記事を最後までお読みいただくことで、卵とビタミンEに関する正しい知識が身につき、ご自身やご家族の健康を守るための、賢い食材選びができるようになるはずです。
【この記事で分かること】
- 卵に含まれるビタミンEの具体的な量と体内での働き
- ビタミンE強化卵と通常の卵、他の機能性卵との明確な違い
- ビタミンEを摂取する際に知っておくべき過剰摂取のリスクと注意点
- 赤ちゃんや妊活中などライフステージに応じた卵の最適な選び方と食べ方
卵のビタミンeは良くないといった噂は本当?
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たまごにはビタミンEは含まれている?
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卵一個あたりのビタミンE含有量はどのくらい?
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ビタミンE入り卵などビタミン強化卵について
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DHA強化卵との違いはなんですか?
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卵のビタミンDとビタミンEはどっちが良い?
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有精卵が気持ち悪いと感じる理由とは
たまごにはビタミンEは含まれている?
はい、結論から言うと卵にはビタミンEが含まれています。卵が「完全栄養食」と称されるのは、生命の誕生に必要な栄養素が凝縮されているためです。具体的には、ビタミンCと食物繊維を除き、人間に必要なほとんどの栄養素をバランス良く含んでいます。その重要な栄養素の一つが、ビタミンEなのです。
ビタミンEは、主に脂質の多い卵黄の部分に豊富に含まれています。これは、ビタミンEが「脂溶性ビタミン」という、油に溶けやすい性質を持つためです。この性質のおかげで、卵黄に含まれる脂質と一緒に摂取することで、体内での吸収率が高まるというメリットもあります。
ビタミンEの最も重要な働きは、強力な「抗酸化作用」です。私たちの体は、呼吸によって取り込んだ酸素を利用する過程で、一部が「活性酸素」という非常に反応性の高い物質に変わります。この活性酸素が増えすぎると、細胞膜やDNAを傷つけ、老化や生活習慣病、がんなどの原因になると考えられています。ビタミンEは、この活性酸素から体を守る盾のような役割を果たし、細胞の健康維持を助けてくれるのです。
卵には、体の基礎を作るタンパク質、エネルギー源となる脂質、目の健康を保つビタミンA、骨を丈夫にするビタミンD、エネルギー代謝を助けるビタミンB群、血液の材料となる鉄、そして味覚を正常に保つ亜鉛といった、実に多様な栄養素が含まれています。ビタミンEもまた、これら他の栄養素と協調しながら、私たちの健康を多方面から支える重要な成分として、その価値を担っていると言えます。
したがって、日常の食事に卵を取り入れることは、ビタミンEをはじめとする多くの必須栄養素を効率的に摂取するための、非常に有効な方法なのです。
卵一個あたりのビタミンE含有量はどのくらい?
通常の卵に含まれるビタミンEの量は、科学的なデータに基づいて公表されています。文部科学省が発表している「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」によると、スーパーなどで一般的に売られている鶏の全卵100gあたりに含まれるビタミンE(α-トコフェロール)は1.0mgです。
これを私たちが日常的に使う「卵一個」に換算してみましょう。日本で流通しているMサイズの卵の可食部(殻を除いた部分)の重さは約60gです。そのため、Mサイズの卵一個を食べることで摂取できるビタミンEの量は、約0.6mgと計算できます。
ただし、この数値はあくまで全国的に調査された平均値であり、全ての卵がこの数値に当てはまるわけではありません。鶏が食べる飼料の内容や、育てられる環境(平飼いやケージ飼いなど)によって、卵の栄養価は変動します。
実際に、2019年に食品成分表が改訂された際には、検査対象のサンプルに栄養強化卵が含まれていたことが原因で、ビタミンEの数値が暫定的に大幅に上昇し、後に注釈が加えられるという出来事がありました。この事例は、市場には多様な栄養価の卵が出回っていることを明確に示しています。
参考として、サイズ別の卵一個あたりのビタミンE含有量(目安)を以下の表にまとめました。
卵のサイズ |
重量(目安) |
ビタミンE含有量(目安) |
---|---|---|
Sサイズ |
約50g |
約0.5mg |
Mサイズ |
約60g |
約0.6mg |
Lサイズ |
約70g |
約0.7mg |
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、成人男性のビタミンEの摂取目安量は一日あたり6.0mg、成人女性では5.0mg(妊婦は6.5mg、授乳婦は7.0mg)とされています。
この基準から見ると、卵一個で摂取できるビタミンEは目安量のおよそ10%程度です。決して多い量ではありませんが、様々な食材から栄養を摂るという食事の基本を考えれば、卵が日々のビタミンE補給に貢献する手軽で優れた供給源の一つであることは間違いないでしょう。
ビタミンE入り卵などビタミン強化卵について
スーパーの卵売り場に行くと、「ビタミンE強化」や「ヨード卵」といった表示を目にすることがあります。これらは「栄養強化卵」や「特殊卵」と呼ばれ、特定の栄養素を通常よりも多く含むように、特別な工夫を凝らして生産された卵です。
この栄養強化の仕組みは、鶏が持つユニークな生理的特徴に基づいています。鶏は、自身が食べた餌の栄養素が、産む卵の成分に直接的に、かつ速やかに反映されやすいという性質を持っています。この性質を応用し、例えばビタミンEを通常より多く配合した特別な飼料を親鶏に継続的に与えることで、卵そのものに含まれるビタミンEの量を人為的に高めることができるのです。
ただし、メーカーが自由に「強化卵」と表示できるわけではありません。消費者を誤解させないよう、表示には厳しい基準が設けられています。鶏卵の表示に関する公正競争規約によれば、「ビタミンE強化卵」と表示するためには、科学的根拠に基づき、通常の卵と比較して一定量以上その栄養素が増量されていなければなりません。
具体的には、前述の食品成分表に記載されている標準値(100gあたり1.0mg)に対して、1.2mg以上増量され、合計で2.2mg以上含まれている、といった明確な基準を満たす必要があります。
ビタミンE強化卵以外にも、市場には様々な種類の栄養強化卵が存在します。代表的なものには、甲状腺ホルモンの成分となるヨウ素を強化した「ヨード卵」、骨の健康に欠かせないビタミンDを強化した卵、脳の働きをサポートするDHAを強化した卵などがあります。
これらの卵は、食生活が乱れがちな現代人にとって、不足しがちな栄養素を手軽に補うための一つの選択肢となります。消費者は自身の健康状態や食生活、そして目的に合わせて、これらの卵を賢く選ぶことが可能です。
DHA強化卵との違いはなんですか?
ビタミンE強化卵とDHA強化卵は、どちらも「栄養強化卵」というカテゴリーに含まれますが、その最も大きな違いは、強化されている栄養素の種類と、それによって期待される主な健康効果です。
ビタミンE強化卵が強化しているのは、前述の通り、強い抗酸化作用を持つ脂溶性ビタミンの「ビタミンE」です。これは、体内の細胞を酸化のダメージから守る「守りの栄養素」としての役割が期待されます。
一方、DHA強化卵が強化しているのは、「DHA(ドコサヘキサエン酸)」という必須脂肪酸です。DHAは、主にいわしやサバなどの青魚に多く含まれるω-3(オメガ3)系脂肪酸の一種で、人間の体内ではほとんど作ることができないため、食事から摂取する必要があります。
DHAは、脳の神経細胞や目の網膜といった重要な器官の主要な構成成分であり、特に胎児や乳幼児の脳の発達、そして高齢者の認知機能の維持に不可欠な役割を果たすことが知られています。こちらは、体の重要な部分を作る「構成要素となる栄養素」と言えるでしょう。
生産方法はどちらも同じ原理で、DHAを豊富に含んだ魚油などを配合した飼料を親鶏に与えることで、卵の中のDHA含有量を高めています。
興味深いことに、ビタミンEとDHAには栄養学的な相乗効果も期待できます。DHAのような多価不飽和脂肪酸は、非常に酸化しやすいという弱点があります。ビタミンEは、その強力な抗酸化作用によって、体内に取り込まれたDHAが酸化されるのを防ぎ、その効果を最大限に引き出す手助けをしてくれるのです。
どちらの卵が一方的に優れているというわけではありません。自身の食生活を振り返り、魚を食べる機会が少ない方はDHA強化卵を、抗酸化力を高めたい方はビタミンE強化卵を選ぶなど、不足しがちな栄養素を補う目的で、これらの強化卵を賢く活用するのが最も良い方法と考えられます。
卵のビタミンDとビタミンEはどっちが良い?
「卵を食べるなら、ビタミンDとビタミンE、どちらを期待するのが良いですか?」という質問に対しては、「どちらも非常に重要であり、優劣をつけることはできません」というのが最も正確な答えになります。この二つのビタミンは、どちらも私たちの体にとって不可欠な脂溶性ビタミンですが、その働きは全く異なり、それぞれが代替不可能な役割を担っているからです。
ビタミンDの主な役割
ビタミンDの最もよく知られた働きは、腸管でのカルシウムの吸収を促進し、血液中のカルシウム濃度を一定に保つことです。これにより、骨や歯の形成をサポートし、丈夫に保ちます。
もしビタミンDが不足すると、カルシウムをどれだけ摂取しても体にうまく吸収されず、骨がもろくなる「骨粗しょう症」や、子供の場合は骨の成長障害である「くる病」のリスクが高まります。また、近年では免疫機能を調整する働きも注目されており、感染症予防にも関与していることが分かってきました。
ビタミンEの主な役割
前述の通り、ビタミンEの主な役割は、強力な抗酸化作用です。体内の細胞膜を構成する脂質が活性酸素によって酸化されるのを防ぎ、細胞の損傷を食い止めます。
これにより、動脈硬化などの生活習慣病の予防や、シミやシワといった肌の老化を抑制する効果が期待されます。また、血行を促進する作用もあり、冷え性や肩こりの改善にも役立つとされています。
このように、ビタミンDは「体の構造を作る」サポート役、ビタミンEは「体をサビから守る」ガードマン役と、それぞれが異なるアプローチで私たちの健康を守っています。卵は、これら両方の重要な脂溶性ビタミンを同時に、しかも吸収しやすい形で摂取できる、非常に効率的な食材です。
したがって、どちらか一方を優先するという発想ではなく、卵を日々の食事に加えることで、両方の素晴らしい恩恵をバランス良く受ける、と考えるのが最も適切な捉え方です。
有精卵が気持ち悪いと感じる理由とは
有精卵に対して一部の方が抱く「気持ち悪い」という感覚は、その卵が持つ「生命の可能性」に起因する、極めて自然な心理的反応だと考えられます。味や栄養、安全性といった物理的な問題ではなく、私たちの倫理観や生命に対するイメージが大きく影響しているのです。
スーパーマーケットで私たちが日常的に手にする卵のほとんどは、効率的な生産のためにオスとメスが隔離された鶏舎で産まれる「無精卵」です。これらは受精していないため、どれだけ温めても孵化してひよこになることはありません。
一方、「有精卵」として販売されている卵は、鶏がより自然に近い環境で生活できるよう、オスとメスが一緒に飼育されている鶏舎(日本のJAS規格では、メス100羽に対してオス5羽以上が基準)で、自然な交配によって産まれた卵です。適切な温度で温め続ければ、約21日でひよこが孵化する可能性があります。
この「ひよこになるかもしれない」という事実が、食べることに心理的な抵抗感や、「命をいただく」という感覚を強く想起させ、「気持ち悪い」という感情につながることがあります。
科学的な観点から見ると、有精卵と無精卵の間に、栄養価の明確な優劣はほとんどないとされています。市場で有精卵が高価で販売されているのは、栄養価が高いからではなく、鶏を平飼いや放し飼いにするなど、自然に近い環境を維持するための飼育コストや手間がかかるためです。
また、卵を割った際に黄身の横に小さな赤い点(血斑)が見られることがありますが、これは「ブラッドスポット」と呼ばれ、卵が形成される過程で卵巣や卵管の毛細血管が切れて混入したものです。これは有精卵・無精卵に関わらず発生しうる現象で、健康上の害はなく、取り除けば全く問題なく食べられます。
したがって、有精卵を選ぶかどうかは、栄養面でのメリットを期待するのではなく、アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から、鶏がストレスの少ない自然な環境で産んだ卵を選びたい、という個人の価値観や選択によるところが大きいと言えるでしょう。
卵のビタミンeは良くないと言われる状況と対策
- ビタミンEのとりすぎや合わない人の注意点
- ビタミンE強化卵は赤ちゃんに与えても平気?
- 妊活中にビタミンEを意識すべきですか?
- ビタミンEの効果が期待できる他の食べ物
- まとめ:「卵のビタミンeは良くない」の真実
ビタミンEのとりすぎや合わない人の注意点
「ビタミンEと卵は良くない」という説が一部で語られる最も大きな理由は、ビタミンEの「過剰摂取」に関する懸念にあります。
ビタミンEは、ビタミンA、D、Kと同じ「脂溶性ビタミン」に分類されます。このグループのビタミンは、水に溶けやすい「水溶性ビタミン(ビタミンB群やC)」とは異なり、過剰に摂取しても余分な量が尿として速やかに排出されにくく、体内の脂肪組織や肝臓に蓄積されやすいという性質を持っています。
まず強調しておきたいのは、卵や野菜、ナッツ類といった通常の食事からビタミンEを摂取している限り、健康な人が過剰摂取に陥る心配はまずないということです。問題となり得るのは、健康志向からサプリメントなどを自己判断で利用し、食事摂取基準で定められた耐容上限量(健康被害のリスクがないとされる上限量)を大幅に超える量を、長期間にわたって摂取し続けた場合です。
ビタミンEの慢性的な過剰摂取は、いくつかの健康上のリスクを引き起こす可能性が報告されています。代表的なものとして、血液の凝固を妨げる作用があり、出血が止まりにくくなる傾向が指摘されています。また、近年の研究では、特に高齢者において骨の代謝に影響を与え、骨粗しょう症のリスクを高める可能性も示唆されています。
特に注意が必要なのは、ワーファリンなどの血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を服用している方です。ビタミンEには血液凝固を抑制する働きがあるため、これらの薬と併用すると、薬の効果を過剰に増強してしまい、わずかな傷でも出血が止まらなくなる危険性があります。このような方は、サプリメントを利用する前に、必ず医師や薬剤師に相談することが不可欠です。
体質的にビタミンEが合わないというケースは非常に稀ですが、もしサプリメントを摂取し始めてから体に何らかの異変(例えば、胃の不快感や湿疹など)を感じた場合は、すぐに使用を中止し、専門家に相談することが大切です。
ビタミンE強化卵は赤ちゃんに与えても平気?
ビタミンE強化卵を赤ちゃんに与えること自体は、栄養学的に見て基本的に問題ありません。特定の栄養素が強化されているからといって、赤ちゃんにとって有害な成分が添加されているわけではなく、あくまで卵本来の栄養バランスの範囲内での調整だからです。
しかし、その前提として、赤ちゃんに初めて卵を与える際には、栄養強化卵であるかどうか以前に、必ず守るべきいくつかの重要なステップと注意点があります。
第一に、最も重要なのが「アレルギーへの配慮」です。卵は、食物アレルギーの原因として最も報告の多い食品の一つであり、アレルギー表示が法律で義務付けられている「特定原材料」に含まれています。
そのため、初めて与える際は、まずアレルギー反応が出ても対処しやすいよう、かかりつけの小児科が開いている平日の午前中に試すのが賢明です。量は、固ゆでした卵黄の中心部を、耳かき1杯程度のごく少量から始め、食べた後に赤ちゃんの口の周りや体に発疹が出ていないか、機嫌が悪くなっていないかなど、体調の変化を注意深く観察する必要があります。
第二に、「徹底した加熱」です。赤ちゃんの消化器官は未熟であり、細菌に対する抵抗力も弱いため、サルモラ菌による食中毒のリスクを完全に排除しなければなりません。生や半熟の状態は絶対に避け、必ず中心部まで完全に火が通った固ゆでの状態から始めます。
一般的に、アレルギーを引き起こす原因となるタンパク質(オボアルブミンなど)を多く含む卵白は、卵黄よりもアレルゲン性が高いため、まずは卵黄に慣れ、問題がないことを確認してから、卵白を試すという順序で進めるのが安全です。
これらの基本的な注意点をしっかりと守っていれば、ビタミンE強化卵を与えても差し支えないと考えられます。しかし、万が一の不安を少しでも減らしたい場合は、まずは通常の卵で離乳食を進め、卵アレルギーがないことを確認した上で、次のステップとして栄養強化卵を試してみるのが、より安心で着実な進め方と言えるでしょう。
妊活中にビタミンEを意識すべきですか?
妊娠を希望している方が、日々の食事でビタミンEを意識して摂取することは、一般的に非常に良いことだと推奨されています。ビタミンEは、その生殖機能へのポジティブな影響から「子宝ビタミン」や「妊娠ビタミン」といった愛称で呼ばれることもあり、妊娠しやすい体づくりをサポートする重要な栄養素の一つと考えられているからです。
その理由は、ビタミンEが持つ強力な抗酸化作用にあります。私たちの体内で過剰に発生した活性酸素は、細胞を傷つけ、老化を促進しますが、これは卵子や精子も例外ではありません。ビタミンEは、この活性酸素によるダメージから卵子や精子の質を守り、その機能を維持する効果が期待されます。質の良い卵子と精子は、受精・妊娠の成功率を高めるための最も基本的な要素です。
さらに、ビタミンEには末梢血管を拡張して血行を促進する働きもあります。これにより、子宮や卵巣への血流が改善され、子宮内膜がふかふかで厚みのある、受精卵が着床しやすい良好な状態に整えられるのを助ける可能性も指摘されています。
このビタミンEの恩恵は、女性だけでなく男性にとっても重要です。男性の体内でビタミンEが不足すると、精子の数が減少したり、運動率が低下したりすることが報告されており、男性不妊の一因となる可能性もあります。したがって、妊活は夫婦で協力して取り組むべき課題であり、パートナーと一緒にビタミンEを意識した食生活を送ることが望ましいでしょう。
もちろん、ビタミンEだけをサプリメントで大量に摂取すれば良いというわけではありません。妊活の基本は、タンパク質、鉄分、亜鉛、そして特に胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減する「葉酸」など、様々な栄養素をバランス良く摂ることにあります。その上で、卵やナッツ類、アボカド、緑黄色野菜といったビタミンEが豊富な食材を食事にうまく取り入れ、総合的な栄養状態を向上させることが良い結果につながる鍵となります。
※卵は良質なタンパク質やビタミンD、鉄分なども同時に摂れるため、妊活中の食事に最適な食材の一つです。
ビタミンEの効果が期待できる他の食べ物
卵もビタミンEを手軽に摂取できる優れた供給源の一つですが、より効率的にビタミンEを補給したい場合、目を向けるべき食材は他にもたくさんあります。ビタミンEは、主に植物性の食品、とりわけ脂質を多く含むナッツ類や種子類、そしてそれらから作られる植物油に豊富に含まれています。
ビタミンEは脂溶性であるため、油と一緒に調理したり摂取したりすることで、体内への吸収率が格段にアップします。この性質を理解しておくと、日々の献立作りがより効果的なものになります。ビタミンEを多く含む代表的な食べ物を、カテゴリー別に以下の表にまとめました。
食品カテゴリー |
具体的な食材例 |
特徴と上手な摂り方 |
---|---|---|
ナッツ・種子類 |
アーモンド、ヘーゼルナッツ、ひまわりの種、ごま |
間食としてそのまま食べたり、サラダや和え物のトッピングにしたりと、手軽に取り入れやすいのが魅力です。 |
植物油 |
ひまわり油、べに花油、米油、ごま油、オリーブオイル |
加熱に強い油は炒め物に、香りの良い油はドレッシングや料理の仕上げにかけるなど、用途に応じて使い分けると良いでしょう。 |
魚介類 |
うなぎ、たらこ、あんこうの肝、さば、いわし |
魚介類の中でも特に脂質の多いものに豊富に含まれます。DHAやEPAといった良質な油も同時に摂取できます。 |
野菜・果物類 |
かぼちゃ、アボカド、赤ピーマン、ほうれん草、モロヘイヤ |
緑黄色野菜に多く、β-カロテンやビタミンCなど他の抗酸化ビタミンも同時に摂取できるため、相乗効果が期待できます。 |
これらの食材を日常の献立に意識して加えることで、無理なくビタミンEの摂取量を増やすことができます。例えば、いつもの「ほうれん草と卵の炒め物」にアーモンドスライスを加えて食感と栄養をプラスする、朝食のトーストに卵と一緒にアボカドを乗せる、かぼちゃのサラダを作るなど、少しの工夫で食事の栄養価は大きく向上します。様々な食材をバランス良く組み合わせることが、健康への一番の近道です。
まとめ:「卵のビタミンeは良くない」の真実
- 「ビタミンEと卵は良くない」という説は、サプリメントなどによる過剰摂取を懸念したもので、通常の食事には当てはまらない
- 健康な人が食事で卵を食べる限り、ビタミンEの過剰摂取を心配する必要はほとんどない
- ビタミンEは脂溶性ビタミンのため、過剰な分は体内に蓄積されやすい性質を持つ
- ワーファリンなど抗凝固薬を服用中の人は、ビタミンEサプリメントの摂取に特に注意が必要
- 卵にはビタミンEが含まれており、特に卵黄に豊富
- 一般的なMサイズの卵一個で、一日に必要なビタミンEの約10%を摂取できる
- ビタミンE強化卵は、特別な飼料によって栄養価を高めた卵で、表示には厳しい基準がある
- DHA強化卵は脳の働きを助けるDHAを強化したもので、ビタミンE強化卵とは目的が異なる
- 卵に含まれるビタミンD(骨の健康)とビタミンE(抗酸化作用)は、どちらも体に必要な栄養素で優劣はない
- 有精卵と無精卵の間に栄養価の大きな差はなく、選択は個人の価値観による
- 有精卵への抵抗感は、生命の可能性をイメージすることによる心理的なものが大きい
- 赤ちゃんにビタミンE強化卵を与えること自体は問題ない
- ただし、初めて卵を与える際はアレルギーと徹底した加熱という基本ルールを必ず守る
- 妊活中は、卵子や精子の質を守るため、男女ともにビタミンEの積極的な摂取が推奨される
- 卵はビタミンEだけでなく、妊活に必要なタンパク質や葉酸も含む優れた食材
- ビタミンEは卵以外に、アーモンドなどのナッツ類、かぼちゃやアボカド、植物油に豊富
- ビタミンEは油と一緒に摂ると吸収率が高まるため、調理法を工夫すると効果的
- 結論として、卵はビタミンEをはじめ多くの栄養素を含む優れた食材であり、バランスの取れた食事の一部として安心して食べられる