公認会計士と税理士、どちらも会計・税務分野における最高峰の国家資格ですが、「結局どちらが上で、自分にはどちらが向いているのだろう?」と、キャリアの岐路で深く悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
インターネットで検索しても、表面的な情報ばかりで、本当に知りたい具体的な違いや将来性まで見えてこない、と感じているかもしれません。自分に合ったキャリアを長期的な視点で選択するためには、両者の違いを正確かつ深く理解することが不可欠です。
この記事では、単なる仕事内容の比較に留まらず、業務内容やクライアントの決定的な違いから、リアルなどっちが稼げるのかという年収の実態比較、そしてそれぞれの資格がどのような個性や価値観を持つ人に本当に向いているのか、その特徴まで多角的に解説を進めます。
さらに、変化の激しいAI時代における資格の将来性、多くの受験生が気になる資格の難易度の本質、合格までに必要な勉強時間のリアルな目安、意外と見落としがちな受験資格と大学での単位取得の条件についても、徹底的に詳しく掘り下げます。
この記事をじっくりと読み終える頃には、漠然としていた二つの資格の輪郭がはっきりと見え、あなたが進むべき最適な道筋が描けているはずです。
【この記事で分かること】
- 公認会計士と税理士の仕事内容や年収の明確な違い
- どちらの資格が自分のキャリアプランに適しているかの判断基準
- 両資格の試験難易度や合格までに必要な学習の道のり
- 資格取得後のキャリアパスと変化する時代での将来性
公認会計士と税理士はどっちが上?仕事内容から比較

- 業務内容やクライアントの決定的違い
- 年収を比較!どっちが稼げるのか解説
- それぞれの資格に向いている人の特徴
- AI時代における資格の将来性とは?
業務内容やクライアントの決定的違い
公認会計士と税理士は、どちらも会計分野の高度な専門家ですが、その社会的役割と活躍するフィールドは大きく異なります。両者の最も根本的な違いは、法律によってその資格を持つ者だけが行うことを許された「独占業務」に明確に表れています。
公認会計士の独占業務は「財務諸表監査」です。これは、企業が作成した決算書(財務諸表)が、会計基準に準拠して適正に作成されているかどうかを、完全に独立した第三者の立場から検証し、意見を表明する業務を指します。投資家や金融機関は、この監査を経た財務諸表の信頼性を基に、株式投資や融資といった重要な経済的意思決定を行います。
つまり、公認会計士は資本市場の公正性を担保する「経済社会のインフラ」とも言える、非常に公共性の高い役割を担っているのです。万が一、企業の粉飾決算などを見逃せば、多くの投資家が損害を被り、市場全体の信頼が揺らぎかねません。監査が法律で義務付けられているのは、主に上場企業や資本金5億円以上または負債200億円以上の会社(大会社)などに限られます。
そのため、公認会計士のクライアントは、必然的に日本を代表するような大企業が中心となります。この大規模かつ複雑な監査業務を一人で完結させることは不可能であり、通常は「監査法人」という専門組織に所属し、複数名のチームを組んで業務にあたるのが一般的です。キャリアパスも、スタッフから始まり、シニアスタッフ、マネージャー、そして最終的には法人の経営を担うパートナーへと、組織の中でステップアップしていく形が基本となります。
一方、税理士の独占業務は「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」という3つの税務業務です。企業の法人税申告や個人の所得税確定申告などを納税者の代理として行い、複雑な税法に基づいた適正な納税をサポートします。税金は、企業の規模や業種を問わず、すべての事業者や多くの個人に関わるものです。
そのため、税理士のクライアントは、大企業から地域に根差す中小企業、個人事業主、さらには相続問題を抱える一般の個人までと、非常に多岐にわたります。税理士は、単に申告書を作成するだけでなく、顧客の経営状況を深く理解し、節税対策や資金繰りのアドバイス、経営計画の策定支援など、経営者の最も身近なパートナーとして多角的なサポートを行うことも少なくありません。この点において、より個別支援の側面が強い仕事と言えるでしょう。
働き方としては、税理士法人に勤務する道もありますが、数年間の実務経験を積んだ後に独立開業し、自身の会計事務所を構える人が多いのも大きな特徴です。顧客との信頼関係を基盤に、地域社会に貢献しながら自らの事業を築いていくキャリアパスを描きやすい資格です。
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比較項目 |
公認会計士 |
税理士 |
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独占業務 |
財務諸表監査 |
税務業務(税務代理、税務書類の作成、税務相談) |
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主なクライアント |
上場企業、大企業 |
中小企業、個人事業主、個人 |
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業務スタンス |
独立した第三者の視点(資本市場の番人) |
顧客に寄り添うパートナーとしての視点(経営の味方) |
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主な働き方 |
監査法人に所属し、チームで活動 |
税理士法人への勤務または独立開業 |
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求められる専門性 |
会計・監査に関する広範かつ体系的な知識 |
税法に関する深く専門的かつ実践的な知識 |
年収を比較!どっちが稼げるのか解説
資格取得を考える上で、年収が大きなモチベーションになることは間違いありません。結論から述べると、公表されている調査データに基づく平均年収では、公認会計士の方が税理士を上回る傾向にあります。
MS-Japanの調査データによると、公認会計士の平均年収が約714万円であるのに対し、税理士の平均年収は約580万円となっており、130万円以上の差が見られます。この差が生まれる主な要因として、公認会計士の多くが勤務する大手監査法人の給与体系が挙げられます。
大手監査法人の初任給は年収550万円前後からスタートすることが多く、その後も経験年数や役職に応じて着実に昇給していきます。例えば、スタッフからシニアスタッフ、マネージャーへと昇進するにつれて年収は上昇し、30代で年収1,000万円を超えることも十分に可能です。クライアントが大企業中心であるため、業務の単価も高く、安定した高収入を得やすい環境が整っています。
ただし、このデータだけで「公認会計士の方が稼げる」と結論づけるのは早計です。なぜなら、税理士には「独立開業」という、収入を飛躍的に伸ばせるキャリアパスが存在するからです。勤務税理士の年収は所属する事務所の規模によりますが、独立開業すれば、その収入は青天井となります。
もちろん、独立して成功するためには、税務の専門知識に加えて、顧客を獲得するための営業力やマーケティング能力、事務所を運営するための経営手腕が不可欠です。しかし、自身の努力と才覚次第で事業を拡大し、年収数千万円、あるいはそれ以上を稼ぐことも夢ではありません。多くの顧客から信頼され、安定した顧問契約を結ぶことができれば、組織に属する以上の経済的成功を収めることが可能です。
一方で、公認会計士も監査法人でのキャリアが全てではありません。監査法人で数年間の経験を積んだ後、その専門性を活かしてコンサルティングファームへ転職したり、一般事業会社のCFO(最高財務責任者)や経理部長といった要職に就いたりするケースも多数あります。これらのキャリアチェンジによって、監査法人時代を上回る年収を得ることも珍しくありません。
したがって、安定した組織の中で着実に高収入を目指したいのであれば公認会計士、自らの力で事業を築き、収入の上限なく挑戦したいのであれば税理士が、それぞれ魅力的な選択肢となり得ます。どちらの道を選ぶかは、自身の価値観やリスク許容度によるところが大きいでしょう。
それぞれの資格に向いている人の特徴
公認会計士と税理士、どちらの資格が自分にとって最適かを見極めるには、仕事内容や年収だけでなく、自身の性格や価値観、そして将来どのような働き方をしたいかを深く見つめ直すことが重要です。それぞれの資格がどのようなタイプの人に特に向いているか、具体的な人物像を交えながら掘り下げていきましょう。
公認会計士に向いている人
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大企業を相手にダイナミックな仕事がしたい人 クライアントは、社会に大きな影響力を持つ日本を代表するような大企業が中心です。グローバルな経済の最前線で、企業の根幹に関わる仕事がしたいという強い意欲のある方には、他では得られない大きなやりがいと刺激を感じられる環境です。
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組織の中でチームとして働きたい人 監査業務は、多様な専門性を持つメンバーと協力し、緻密な計画の下で進めるチームプレーが基本です。個人の力だけでなく、チーム全体の力を最大化して大きな目標を達成することに魅力を感じる、協調性の高い人に向いています。
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知的好奇心が旺盛で、論理的思考力と公正な視点を持つ人 企業の財務状況を、膨大な資料の中から客観的かつ公正な立場で分析し、評価する能力が求められます。まるで探偵のように、数字の裏に隠された矛盾や異常値を見つけ出し、その原因を粘り強く追究する論理的思考力と、いかなる圧力にも屈しない強い倫理観が不可欠です。
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グローバルに活躍したい人 クライアントが海外に多くの拠点を持つグローバル企業であることも多く、海外出張や海外駐在のチャンスも豊富にあります。語学力を活かし、国際的なビジネスの世界で自身のキャリアを築きたいという志向を持つ人にとって、非常に魅力的な選択肢となります。
税理士に向いている人
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中小企業や個人の役に立ちたいという想いが強い人 地域で奮闘する中小企業の経営者や、夢を追いかける個人事業主にとって、税理士は会計や税務だけでなく、経営全般について相談できる最も身近な専門家です。顧客一人ひとりの顔が見える距離で、その事業の成長を親身になってサポートすることに喜びを感じる人に向いています。
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将来的に独立開業し、一国一城の主を目指したい人 税理士は、公認会計士に比べて少ない初期投資で独立開業しやすい資格です。組織の歯車としてではなく、自分の裁量と責任で働き、自らの事務所を理想の形に育てていきたいという強い意志と起業家精神のある方には、最適な道と言えるでしょう。
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高いコミュニケーション能力を活かしたい人 顧客との長期的な信頼関係を築くことが、仕事のすべての基本となります。専門知識を分かりやすく説明する能力はもちろん、経営者の孤独や悩みに真摯に耳を傾け、ときには厳しい現実を伝える覚悟も求められる、人間力が活きる仕事です。
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一つの専門分野を深く掘り下げたいという探求心のある人 税法は非常に複雑で、毎年のように改正が行われる奥深い世界です。例えば、事業承継、相続、国際税務、医療法人など、特定の分野の専門性を徹底的に高め、「この分野なら誰にも負けない」という独自の強みを築きたいという職人気質な探求心のある方にも向いています。
AI時代における資格の将来性とは?
AI(人工知能)技術の急速な進化は、多くの専門職のあり方を変えつつあり、「将来、公認会計士や税理士の仕事はAIに奪われるのではないか」という不安の声も聞かれます。結論から言えば、業務の一部はAIによって代替される可能性があるものの、資格そのものの価値や専門家としての役割がなくなることはないと考えられます。
たしかに、これまで専門家の業務の一部を占めてきた定型的な作業は、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、クラウド会計ソフトの普及により、今後さらに自動化が進んでいくでしょう。
具体的には、領収書からの仕訳データ入力、単純な税務申告書の作成、過去のデータとの突合といった作業です。これらの業務に多くの時間を割いていた会計事務所や監査法人は、ビジネスモデルの変革を迫られることになります。
しかし、AIが苦手とする領域、つまり人間にしかできない付加価値の高い業務は、依然として多く残ります。むしろ、その重要性は増していくと考えられます。
例えば、税理士の業務で言えば、複雑な税制や判例を多角的に解釈し、クライアントの個別の事情に合わせて最適なタックスプランニングを立案するコンサルティング業務。あるいは、企業の経営課題を深くヒアリングし、事業承継やM&Aといった高度な意思決定をサポートする役割です。
公認会計士の監査業務においても、AIは膨大な取引データを瞬時に分析し、異常値を検出する強力なツールにはなりますが、その異常値がなぜ生じたのかを経営者との対話を通じて解明したり、職業的懐疑心に基づいて不正の兆候を見抜いたりすることは、経験豊かな人間の専門家にしか担えません。
これからの時代に求められるのは、AIを恐れるのではなく、AIを「優秀なアシスタント」として使いこなし、自らはより高度で創造的な業務に集中できる専門家です。定型業務から解放されることで、公認会計士や税理士は、クライアントとの対話や戦略的思考により多くの時間を割けるようになります。
したがって、常に学び続け、変化に柔軟に対応していく意欲さえあれば、両資格の将来性は非常に明るく、活躍の場はむしろ広がっていくと言えるでしょう。
公認会計士と税理士はどっちが上?資格試験から比較

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資格の難易度は最高クラス
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合格に必要な勉強時間の目安
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受験資格と大学での単位取得
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試験科目の免除制度について解説
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公認会計士は税理士になれるって本当?
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結論:公認会計士と税理士はどっちが上?
資格の難易度は最高クラス
公認会計士試験と税理士試験は、どちらも会計系資格の最高峰に位置づけられており、その難易度は間違いなく特Aクラスです。どちらがより難しいかを単純に比較することは、試験の性質が全く異なるため困難ですが、それぞれの「難しさの本質」を理解することは、目指す資格を選択する上で非常に重要です。
公認会計士試験の難しさは、その試験範囲の広さと、一度に求められる知識量の膨大さにあります。短答式試験(4科目)と論文式試験(5科目)に分かれており、基本的には1.5年から2年という比較的短期間で、これらの全ての科目に合格することを目指します。財務会計論、管理会計論、監査論、企業法といった科目はそれぞれが密接に関連しており、一つの分野だけを深く理解するのではなく、全体を体系的に学習する必要があります。
そのため、学習中は常に複数の科目を同時並行で進めなければならず、集中力と計画性が問われます。このスタイルから、公認会計士試験は「短距離走」に例えられますが、その距離は非常に長く、圧倒的な学習量を全力で駆け抜ける持久力も必要とされる厳しいレースです。最終的な合格率は10%前後で推移しており、多くの受験生が涙をのむ、非常に狭き門です。
一方、税理士試験の難しさは、その長期戦を戦い抜く精神力と、各科目の専門性の深さにあります。「科目合格制」が採用されており、合計5科目に合格すれば資格を取得できます。一度合格した科目は生涯有効となるため、1科目ずつ自分のペースで受験できるのが最大の特徴です。このため、働きながら数年かけて合格を目指す社会人受験生が多く、「長距離走」と表現されます。
しかし、この長距離走は決して平坦な道のりではありません。数年間にわたって仕事と勉強を両立させ、モチベーションを維持し続けること自体が大きな挑戦です。また、各科目は独立している分、非常に専門性が高く、解答には条文の正確な暗記や深いレベルでの理解が求められます。科目ごとの合格率は10%~20%程度ですが、5科目すべてにストレートで合格できる人はごく僅かであり、最終的な官報合格(5科目合格)を果たすまでの道のりは、想像以上に険しいものです。
どちらの試験も、合格基準点は設けられているものの、実質的には上位十数パーセントしか合格できない相対評価の競争試験です。生半可な覚悟で太刀打ちできる相手ではないという点は、両者に共通する厳然たる事実です。
合格に必要な勉強時間の目安
最高クラスの難易度を誇る両資格に合格するためには、質の高い学習を、長期間にわたって継続することが絶対条件となります。その目安となる勉強時間は、決して少なくありません。
一般的に、公認会計士試験の合格に必要とされる総勉強時間は、2,500時間から3,500時間程度と言われています。これを2年間で達成する場合、単純計算で1日あたり平均4時間から5時間程度の勉強が必要になります。多くの受験生が、大学在学中や受験に専念できる環境を確保し、生活のほとんどを勉強に捧げることで、この膨大な学習量をこなしています。
例えば、朝から晩まで予備校の自習室にこもり、講義のインプットと問題演習のアウトプットを繰り返す、というのが典型的な受験生の一日です。短期合格を目指すには、このような集中的な学習環境が大きな鍵となります。
対して、税理士試験で5科目の合格を勝ち取るために必要とされる総勉強時間は、選択する科目によって変動しますが、合計で2,000時間から3,000時間程度が目安とされています。科目合格制のため、学習計画を自分のライフスタイルに合わせて柔軟に立てられるのが特徴です。
例えば、働きながら受験する社会人の場合、「平日は仕事終わりの2時間と通勤時間、休日は5時間」といった形で勉強時間を捻出し、1年で1〜2科目の合格を目標に着実にステップアップしていくのが一般的なプランです。これを3年から5年、あるいはそれ以上の期間をかけて継続し、最終的な5科目合格を目指します。長期間にわたるため、いかに学習を習慣化し、モチベーションを維持するかが合格の大きなポイントになります。
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比較項目 |
公認会計士試験 |
税理士試験 |
|---|---|---|
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勉強時間の目安 |
2,500~3,500時間 |
2,000~3,000時間(5科目合計) |
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標準的な学習期間 |
1.5年~2年(専念) |
3年~5年(社会人) |
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学習スタイル |
短期集中型 |
長期計画型 |
どちらの試験も、独学での合格は極めて困難と言わざるを得ません。その理由は、試験範囲が広大であることに加え、実質的な競争試験であるため、他の受験生がどこまで学習しているかを把握し、効率的に得点するための戦略が不可欠だからです。
多くの場合、資格予備校などを活用し、試験傾向を熟知したプロの講師による質の高い教材とカリキュラムに沿って学習を進めることが、合格への最も確実な近道です。
受験資格と大学での単位取得
試験への挑戦を決意したなら、まず最初に確認しなければならないのが「受験資格」の有無です。この点において、公認会計士と税理士には非常に明確な違いがあり、どちらの資格を目指すかを決める上での重要な判断材料となります。
公認会計士試験には、学歴、年齢、国籍といった受験資格の制限が一切ありません。これは公認会計士試験の大きな特徴であり、門戸が広く開かれていることを意味します。「公認会計士になりたい」という強い意志さえあれば、高校生であろうと、社会人であろうと、全く異なる分野を学んできた人であろうと、誰でも平等に挑戦することが可能です。この制度は、多様なバックグラウンドを持つ人材を業界に迎え入れるという点でも、大きな意義を持っています。
一方で、税理士試験を受験するためには、定められた受験資格のいずれか一つを満たす必要があります。これは、税理士という職業が持つ専門性と社会的責任の高さから、一定の素養を持つ人に受験者を限定する目的があると考えられます。主な受験資格は、以下の3つのカテゴリーに大別されます。
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学識による受験資格 これが最も一般的なルートです。大学、短大、または高等専門学校を卒業し、社会科学に属する科目(法律学または経済学など)を1科目以上履修していることが条件となります。法学部や経済学部、商学部などの学生は、通常のカリキュラムをこなしていれば自然とこの要件を満たすことが多いです。大学在学中に受験資格を得たい場合は、大学3年次以上で、社会科学に属する科目を含め62単位以上を取得している必要があります。
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資格による受験資格 特定の高難易度資格を保有していることで、受験資格が認められるルートです。代表的なのは、日商簿記検定1級の合格者です。また、司法試験合格者や、公認会計士試験の短答式試験合格者なども、この要件に該当します。
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職歴による受験資格 学歴や資格がなくても、実務経験によって受験資格を得ることも可能です。例えば、弁理士・司法書士・行政書士などの業務経験や、法人または事業を営む個人の会計に関する事務などに、通算して2年以上従事した経験がある場合も受験資格が得られます。
ただし、重要な変更点として、2023年度の税理士試験から制度が改正され、必須の会計科目である「簿記論」と「財務諸表論」の2科目については、上記の受験資格が完全に撤廃されました。これにより、例えば文系以外の学部の学生や、これまで会計実務の経験がなかった社会人でも、気軽に税理士試験への第一歩を踏み出せるようになりました。この改正は、税理士を目指す人にとって大きな追い風と言えるでしょう。
試験科目の免除制度について解説
公認会計士試験と税理士試験には、どちらも特定の条件を満たすことで、試験科目の一部が免除される制度が設けられています。これらの制度を戦略的に活用することは、長期にわたる受験勉強の負担を軽減し、合格への道のりを効率化する上で非常に有効な手段となり得ます。
公認会計士試験における科目免除は、主に試験の段階に応じて設定されています。まず、第一関門である短答式試験に一度合格すると、その後の2年間は短答式試験が免除され、最終関門である論文式試験の対策に専念することが可能です。この制度があるため、多くの受験生はまず短答式試験の突破を最優先課題とします。
さらに、論文式試験で残念ながら不合格となった場合でも、一部の科目で合格基準を上回る成績を収めていれば、その科目についても合格発表から2年間は試験が免除されます。これにより、次回の試験では残りの科目に集中して取り組むことができます。
税理士試験における科目免除制度は、公認会計士試験よりも多様なルートが存在し、自身のキャリアプランと密接に関わってきます。 最も代表的なのは、大学院に進学し、修士または博士の学位を取得することによる免除です。
例えば、大学院の商学研究科などで会計学に関する研究を行い、修士論文が国税審議会によって認定されると、会計科目である「簿記論」と「財務諸表論」の2科目が免除される場合があります。同様に、法学研究科などで税法に関する研究を行い、修士論文が認定されれば、選択する税法科目のうち1科目が免除される可能性があります。この制度は、試験勉強の負担を大幅に減らせるメリットがある一方で、大学院に通うための時間と学費がかかるという側面も持ち合わせています。
もう一つの大きなルートが、税務署をはじめとする国税官公署での勤務経験による免除です。国税職員として一定期間勤務した国税従事者には、その勤務年数に応じて科目が免除される特例があります。具体的には、10年以上勤務し、指定された研修を修了した場合は税法科目が免除され、23年以上勤務し、同様の研修を修了した場合には、会計科目を含む残りの全科目も免除され、無試験で税理士資格が付与されることもあります。
これらの免除制度を利用するかどうかは、自身の学歴や職歴、そして将来のキャリア設計を総合的に考慮して判断することが求められます。
公認会計士は税理士になれるって本当?
「公認会計士の資格を取れば、税理士の仕事もできる」という話を耳にしたことがあるかもしれませんが、これは単なる噂ではなく、法律で定められた事実です。
税理士法第3条には、税理士となる資格を有する者として、税理士試験に合格した者のほかに、弁護士、そして公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む)が明確に規定されています。
これは、難関の公認会計士試験に合格し、実務経験などの所定の要件を満たして公認会計士として登録すれば、別途、税理士試験の5科目を一つずつ受験することなく、税理士会に登録するだけで税理士としての独占業務(税務代理、税務書類の作成、税務相談)を行うことができる、ということを意味します。さらに、行政書士としても登録が可能になるため、一つの資格で三つの専門業務を行える可能性を秘めていることになります。
一方で、その逆、つまり税理士が自動的に公認会計士になることはできません。税理士資格を持つ人が、公認会計士の独占業務である監査を行いたい場合は、他の一般の受験生と同様に、公認会計士試験を受験し、合格する必要があります。
この制度上の関係だけを見ると、より広範な業務を行える公認会計士の方が「お得」であり、目指す価値が高いように感じるかもしれません。
しかし、実務の観点からは、注意すべき点もあります。公認会計士試験の試験科目にも「租税法」は含まれますが、その出題範囲や問われる知識の深さは、税理士試験の各税法科目に及びません。そのため、公認会計士が税理士登録をして税務業務、特にクライアントの状況に応じた複雑な税務コンサルティングやタックスプランニングを行う場合、実務で通用するレベルの税法に関する知識を、改めて深く学び直す必要が生じます。多くの公認会計士は、監査法人内の税務部門への異動や、外部の専門研修を受講することで、この知識を補っています。
将来、税務のスペシャリストとしてキャリアを築きたいという明確な目標があるのであれば、一見遠回りに見えるようでも、最初から税理士試験に挑戦し、受験勉強を通じて税法の深い知識と理論を体系的に学ぶ方が、結果的に専門家としての確固たる土台を築く近道となるでしょう。
資格の制度上の有利不利だけで判断するのではなく、自分が将来どの分野のプロフェッショナルとして活躍したいのかをじっくり考えることが、後悔のない選択をする上で最も大切です。
結論:公認会計士と税理士はどっちが上?
これまで仕事内容、年収、難易度、将来性など、様々な角度から公認会計士と税理士を比較してきましたが、最終的な結論を改めて整理します。
「どちらが上か」という問いに対する直接的な答えは、「どちらも上ではない」というのが真実です。両者はそれぞれ異なる社会的使命と専門性を持つ、対等な国家資格です。どちらを選ぶべきかは、完全にあなた自身のキャリアプランと価値観に委ねられています。
- 公認会計士は「監査」、税理士は「税務」という異なる専門分野を持つ
- 独占業務や社会的役割が違うため、どちらが上という単純な優劣は存在しない
- クライアントは公認会計士が大企業中心、税理士が中小企業や個人中心
- 働き方は公認会計士が組織でのチームプレー、税理士は独立も視野に入れた個人プレーが多い
- 平均年収のデータでは公認会計士の方が高い傾向にある
- 税理士は独立開業に成功すれば、収入の上限なく稼げる可能性がある
- 大企業相手のダイナミックな仕事をしたいなら公認会計士が向いている
- 地域に密着し、顧客の成長を親身に支えたいなら税理士が適している
- 試験の難易度は、試験の性質は違えど、どちらも会計系資格の最高峰
- 公認会計士試験は、短期集中で一括合格を目指す「短距離走」
- 税理士試験は、科目合格制を活かして長期間で合格を目指す「長距離走」
- 合格に必要な勉強時間は、いずれも3000時間前後が一つの大きな目安
- 公認会計士試験には受験資格がなく、誰でも挑戦できる門戸の広さがある
- 税理士試験には学識や職歴などの受験資格が必要(一部の会計科目を除く)
- 公認会計士は税理士登録が可能だが、実務で通用する税務知識の別途習得は不可欠
- 最終的には、自分がどのような専門家になりたいか、どのような働き方をしたいかというキャリアプランで選ぶべき

