リトープスの育て方は難しい?室内での失敗しない管理術を解説

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「生ける宝石」とも呼ばれるリトープス。その独特な姿に惹かれて育ててみたいと思うものの、リトープスの育て方は難しいと不安を感じていませんか?実際、リトープスには多くの種類があり、一般的な観葉植物とは異なる生態を持っています。

この記事では、基本的な育て方と室内での置き場所、特に管理が難しい夏や冬はどこに置くべきか、といった疑問にお答えします。また、多くの人が失敗しがちな、枯れる原因となりやすい水やりの頻度、株が溶ける前兆やしわしわになった時の対策についても解説します。

さらに、難しいリトープスの育て方と応用として、適切な植え方と植え替え、寄せ植えのコツ、神秘的な脱皮と脱皮失敗の見分け方、開花時期や種の取り方、そして増やし方の基本まで、網羅的に情報をお伝えしていきます。

【この記事で分かること】

  • リトープスが難しいと言われる理由と基本管理
  • 季節ごとの具体的な水やり頻度と置き場所
  • 「溶ける」「しわしわ」など失敗例の対策
  • 脱皮や植え替え、増やし方などの応用テクニック

リトープスの育て方は難しい?室内での基本管理

リトープスの栽培が「難しい」と感じられるのは、主にその独特な生育サイクル、特に水やりと温度管理に起因します。リトープスは、南アフリカやナミビアなどの岩砂漠地帯が原産です。乾燥した厳しい環境を生き抜くため、水分を体内に蓄え、動物の食害から身を守るために小石に擬態するよう進化したと言われています。この特殊な生態を理解することが、栽培成功への第一歩です。

ここでは、栽培を始める前に知っておきたい基本情報と、日々の管理の土台となるポイントを解説します。

  • 栽培前に知るリトープスの種類
  • 育て方と室内での置き場所
  • 夏や冬はどこに置くべきか
  • 枯れる原因は?水やりの頻度
  • 溶ける前兆としわしわの対策

栽培前に知るリトープスの種類

リトープスを上手に育てる第一歩は、その種類の多さを知ることから始まります。リトープス属には非常に多くの種類が存在し、市場に流通しているものだけでも40種、品種改良されたものを含めると150以上にもなると言われています。

代表的なリトープスの種類

種類によって本体の色や上面の模様(窓)、花の咲き方が大きく異なります。代表的な種類とその特徴をいくつかご紹介します。

紫勲玉(しくんぎょく): 名前に紫とありますが、緑色からベージュ系まで個体差が非常に大きい種類です。上面の模様のバリエーションが豊富で、コレクション性が高いのが魅力です。

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日輪玉(にちりんぎょく): リトープスの中でも大型になる品種で、直径が7cmほどになることもあります。濃い茶色と薄い茶色のまだら模様が特徴的です。

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麗虹玉(れいこうぎょく): 胴体はオリーブグリーンで、上面の天窓と呼ばれる部分の透明度が高いのが特徴です。光の加減によって見え方が変わる美しさがあります。

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紅大内玉(べにおおうちぎょく): 濃いピンク色の本体と赤紫色の模様が非常に鮮やかなリトープスです。白い花を咲かせますが、見た目の美しさとは裏腹に、栽培は難しい品種とされています。

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トップレッド: 胴体はグレーがかっていますが、上面には真っ赤な網目模様が入り、印象の強い種類です。

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網目寿麗玉(あみめじゅれいぎょく): 白から薄い翡翠色をしており、網目状の模様が入ります。模様の色は赤系から褐色まで様々です。

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宝翠玉(ほうすいぎょく): 葉の部分が大きく広がる特徴があります。通常は黄色い花を咲かせ、花びらの下部が白くなるのが特徴です。

良い株の選び方

リトープスを入手する際は、健康な株を選ぶことが大切です。以下のポイントをチェックしましょう。

  1. ハリがあるか: まず、株全体を見て、ぷっくりとしたハリがあるものを選びます。シワが寄っていたり、ブヨブヨしているものは避けます。

  2. 傷がないか: よく観察し、株の表面に傷がついていないか確認してください。

  3. 徒長していないか: 徒長(とちょう)とは、日光不足などが原因で茎や葉が間延びしてしまう状態です。リトープスの場合、本体が細長くヒョロッと伸びているものは徒長している可能性が高いです。徒長した株は病弱で、環境の変化に弱いため避けるのが賢明です。

初心者の方は、まず流通量が多く比較的安価に入手できる種類から始めて、リトープス特有の生態に慣れていくのが良いでしょう。

育て方と室内での置き場所

リトープスの育て方において、室内での置き場所は非常に大切な管理ポイントです。リトープスは日光を好む植物であり、十分な光がないと徒長(とちょう)してしまいます。

光合成の方法と日当たり

一般的な植物と異なり、リトープスは本体の上面にある「窓」と呼ばれる半透明の部分から効率よく光を取り込み、光合成を行います。原産地では、体の大半が砂利に埋まり、この「窓」だけを地表に出して擬態しています。

そのため、生育期である秋から春(11月~4月頃)にかけては、室内の日当たりが最も良い場所、例えば南向きの窓辺などで管理し、上面に十分な光を当てることが理想です。

徒長させないために

もしリトープスが細長くヒョロヒョロと伸びてしまう「徒長」を起こした場合、それは日光不足の明確なサインです。花が咲く時期に、花茎だけが異常に長く伸びる場合も日光不足が考えられます。

一度徒長してしまうと、その株は元のずんぐりとした姿には戻りません。徒長した株は見た目が悪いだけでなく、自重で倒れやすくなったり、病気への抵抗力が弱まったりします。その場合は、すぐに日当たりの良い場所へ移動させ、次の脱皮で新しく生まれてくる株が正常な形に育つのを待つことになります。

風通しと適正温度

リトープスは、高温多湿と蒸れを極端に嫌う性質があります。そのため、日当たりと同時に「風通し」を確保することが欠かせません。空気がよどむ場所に置くと、株が腐ってしまったり、病害虫が発生しやすくなったりします。

室内管理の場合、定期的に窓を開けて換気したり、特に夏場はサーキュレーターや扇風機などで空気を緩やかに循環させたりする工夫が求められます。

栽培に適した気温は8℃~25℃程度です。気温が5℃を下回るようになると生長が鈍り、ダメージを受ける可能性があるため、冬場は室内に取り込む必要があります。逆に、35℃を超えるような真夏の猛暑も苦手で、生長が止まり休眠状態に入ります。

夏や冬はどこに置くべきか

リトープスの管理を難しくしている最大の要因が、季節ごとの置き場所、特に日本の過酷な夏と厳しい冬の管理です。リトープスは「冬型」の多肉植物とされますが、その生態に合わせた場所の移動が、栽培を成功させる鍵となります。

夏の管理(休眠期:6月~9月頃)

リトープスは、気温と湿度が上がる6月頃から9月頃までを休眠期として過ごします。この時期、日本の高温多湿な環境はリトープスにとって最も危険な季節です。

  • 置き場所: 直射日光は絶対に避け、風通しの良い涼しい「半日陰」に移動させます。室内であれば、レースのカーテン越しに柔らかな光が当たる場所や、エアコンの風が直接当たらない明るい部屋が良いでしょう。屋外で管理する場合も、すだれや遮光ネット(50~60%程度)を利用して強い日差しを遮ります。

  • 注意点: 最も避けたいのは「蒸れ」です。高温の状態で土が湿っていると、株はひとたまりもなく溶けるように腐ってしまいます。前述の通り、サーキュレーターなどを使って空気を動かし、鉢の温度が上がりすぎないようにすることが重要です。

冬の管理(生育期:11月~4月頃)

11月頃から4月頃まではリトープスの生育期にあたりますが、寒さには一定の注意が必要です。

  • 置き場所: 前述の通り、日中は室内の最も日当たりの良い窓辺に置き、光合成を促します。

  • 注意点: リトープスはある程度の寒さ(8℃程度)には耐えますが、気温が5℃を下回るような環境や、霜が降りるような場所は危険です。特に夜間は、窓辺の温度が外気とほぼ同じレベルまで急激に下がることがあります。天気予報で5℃を下回ると予想される日は、夜間だけ窓から離れた部屋の中央などに鉢を移動させると安心です。

このように、季節ごとに最適な置き場所は異なります。生育サイクルを理解し、環境を整えてあげることが、難しいとされるリトープス栽培の第一歩となります。

季節 生育サイクル 置き場所のポイント 注意点
春 (3-5月) 生育期~脱皮期 日当たりの良い場所(窓辺など) 脱皮が始まったら水やりを厳禁にする
夏 (6-9月) 休眠期 直射日光を避けた涼しく風通しの良い半日陰 高温多湿による「蒸れ」を徹底的に避ける
秋 (9-11月) 生育緩慢期~生育期 徐々に日光に慣らし、日当たりの良い場所へ 涼しくなり始めたら水やりを慎重に再開
冬 (12-2月) 生育期 室内の日当たりが良い場所 夜間の冷え込み(5℃以下)を避ける

枯れる原因は?水やりの頻度

リトープスが枯れる原因のほとんどは、「水やりの失敗」によるものです。特に「水のやりすぎ」が、根腐れや株の「溶け」を引き起こし、致命的な結果を招きます。リトープスは乾燥地帯が原産であり、体内に水分を蓄える能力に非常に長けていることを常に忘れてはいけません。

季節ごとの水やりスケジュール

リトープスの水やりは、生育サイクルに合わせてメリハリをつけることが最も求められます。

  • 秋(9月下旬~11月): 夏の休眠から目覚め、生育を再開する時期です。気温が涼しくなってきたら、ごく少量の水から与え始め、徐々に間隔を詰めていきます。土が完全に乾いてから数日待って、鉢底から水が流れるくらいたっぷりと与えるのが基本です。

  • 冬(12月~2月): 生育期ではありますが、低温で土の乾きが遅くなります。水やりの頻度はさらに減らし、土が完全に乾ききってから数日後に水やりをします。環境にもよりますが、月に1~2回程度が目安です。気温が5℃を下回るような日は水やりを避け、暖かく晴れた日の午前中に行います。

  • 春(3月~5月): 脱皮が始まる季節です。脱皮の兆候が見え始めたら(株の中央が割れ始めたら)、水やりをピタリとストップします。この時期の水やりは二重脱皮などの原因となります。

  • 夏(6月~9月上旬): 休眠期です。この時期は、基本的に「断水」します。株がしわしわになり、心配になるかもしれませんが、リトープスは高温多湿が苦手です。この時期に水を与えると、株が蒸れてほぼ確実に腐って(溶けて)しまいます。

水やりの具体的な注意点

水やりは、リトープスの株自体(特に割れ目)に水がかからないよう、株元にそっと与えるのが理想です。株に水滴が残ったまま強い日光に当たると、レンズ効果で葉焼けを起こす可能性もあります。

水やりのタイミングは、季節を問わず、天気が良く乾燥しやすい日の午前中が最適です。夕方や夜に水を与えると、夜間に気温が下がって土が乾かず、根腐れのリスクが非常に高まるため避けてください。

溶ける前兆としわしわの対策

リトープスの管理において、株の状態が「溶ける」または「しわしわ」になるのは、栽培者が直面する二大トラブルです。これらは異なる原因によって引き起こされるため、正確な見極めが重要です。

溶ける前兆と原因

リトープスが「溶ける」とは、株がブヨブヨになり、中身が液状化して皮だけが残るような状態を指します。これは主に、高温多湿な時期(特に夏)の水やりが原因で起こる「根腐れ」や「蒸れ」によるものです。

溶ける前兆としては、株元が変色したり、透明感が出たり、触ると明らかに張りがなく異様に柔らかくなったりします。この状態は、リトープスにとって末期症状であることが多く、一度この状態になると、残念ながら復活させるのは非常に困難です。予防策は、前述の通り、夏の休眠期は完全に断水し、風通しを徹底することしかありません。

しわしわになる原因と見分け方

一方で、株の表面に「しわ」が寄る状態は、いくつかの異なる原因で発生します。この見極めを誤ると、不適切な対処をしてしまい、かえって株を弱らせることになります。

脱皮による正常なしわ

3月~5月頃の脱皮期に、外側の古い葉(旧葉)がしわしわになるのは、中の新しい葉(新葉)に水分と栄養を譲っているためです。これは全く問題のない、正常な生理現象です。この時期にしわを見て慌てて水を与えると、脱皮失敗の原因となります。

休眠期(夏)の正常なしわ

6月~8月の夏の休眠期に、株全体がややしぼみ、細かいしわが寄るのも、活動を停止し、暑さに耐えているためで、多くの場合正常な反応です。この時期の水やりは厳禁です。

生育期(秋・春)の水切れサイン

生育期である秋や春に株全体に細かいしわが寄っている場合は、水切れのサインである可能性があります。この場合は、水やりのタイミング(土が乾ききっているか)を確認し、適切に水を与えれば、数日でハリが戻るはずです。

根腐れによるしわ

最も注意が必要なのが、根腐れを起こしている場合です。生育期にしわが寄っているため水を与えても、根が機能していない(腐っている)ため水を吸収できず、しわが戻らない、あるいはさらに悪化します。この状態を「水切れ」と誤認してさらに水を与え続けると、株は確実に枯れてしまいます。生育期に水を与えてもハリが戻らない場合は、一度鉢から抜き、根の状態を確認する必要があるかもしれません。

 

リトープスの育て方は難しい?室内管理の応用術

基本的な管理に慣れてきたら、次は植え替えや増やし方など、一歩進んだ管理に挑戦してみましょう。これらはリトープスを長く健康に楽しむために必要な作業ですが、基本管理同様、適切な時期と方法で行うことが大切です。リトープスの魅力をさらに深く知るためのステップです。

  • 植え方と植え替え、寄せ植えのコツ
  • 脱皮と脱皮失敗の見分け方
  • 開花時期と種の取り方
  • 増やし方は分頭・株分けが基本
  • 「リトープス育て方は難しい」の総括

植え方と植え替え、寄せ植えのコツ

リトープスの植え方や植え替えには、その独特な根の形状と、蒸れを防ぐための配慮が必要です。土づくりや肥料の与え方にもコツがあります。

植え替えの時期と頻度

リトープスは生長が非常にゆっくりであるため、頻繁な植え替えは必要ありません。植え替え自体が株にとってストレスになる可能性もあります。目安としては、数年に一度、鉢の中が窮屈になってきたと感じたタイミングや、購入してから2~3年が経過し土が古くなった頃合いで行います。

最適な時期は、生育期が始まる秋(9月~11月頃)です。休眠期である夏場の植え替えは、株に大きなダメージを与えるため絶対に避けましょう。

適切な鉢と土づくり

  • 鉢: 前述の通り、リトープスは太く長い根(直根)を下に伸ばします。そのため、浅い鉢ではなく、根がしっかり伸びるスペースを確保できる「深さのある鉢」を選ぶことが重要です。鉢底に根が達すると根腐れの原因になりやすいため、鉢の深さは株のサイズに対して余裕を持たせます。素材は、通気性の良い素焼き鉢やテラコッタ鉢が蒸れにくく推奨されます。

  • 土づくり: 最も大切なのは「水はけの良さ」です。市販の「サボテン・多肉植物用の土」を使うのが手軽ですが、その場合もできるだけ粒が細かいものを選ぶと良いでしょう。自分で配合する場合は、赤玉土(小粒)と鹿沼土(小粒)をそれぞれ4割程度で配合し、残りの2割に、もみ殻くん炭やバーミキュライト、真砂土などを混ぜ合わせ、水はけを意識して調整します。

肥料について

リトープスは基本的に多くの栄養を必要としません。肥料の与えすぎは、かえって形を崩したり(徒長)、根を傷めたりする原因になります。

もし与える場合は、肥料ではなく「活力剤」を使用する方が育てやすいでしょう。生育期である11月~4月頃に、規定よりも薄めた活力液(リキダスなど)を水やり代わりに与える程度で十分です。

植え方と寄せ植えのコツ

植え替えの手順は以下の通りです。

  1. 鉢からリトープスを慎重に引き抜きます。根の張りが弱いため、簡単に抜けるはずです。

  2. 古い土を落とし、根をよく観察します。黒ずんだり、枯れたりしている痛んだ根があれば、清潔なハサミでカットします。枯れた古い葉なども取り除きます。

  3. 株を1週間ほど、風通しの良い日陰で陰干しし、根の切り口を乾燥させます。

  4. 新しい鉢に鉢底石と用土を入れ、乾燥させたリトープスを植え付けます。

植え付けの際、原産地では本体が土に埋まっていますが、日本の高温多湿な環境下では、深く植えすぎると蒸れの原因となります。本体の1/3から半分程度が土に埋まるくらいを目安にし、深く植えすぎないよう注意します。

寄せ植えは見た目にも楽しいものですが、注意点として、リトープスはリトープス属同士で寄せ植えするのが基本です。異なる種類を寄せ植えする場合は、カラー(赤系で揃える、淡いグリーンで統一するなど)を意識するとオシャレに見えます。

最も重要な注意点は、リトープスと他の属の多肉植物(例:エケベリア、セダムなど)を一緒に寄せ植えしないことです。生育サイクルや水やりの要求量が全く異なるため、管理が非常に難しくなり、どちらかを枯らしてしまう原因となります。

栽培時の注意点:病害虫対策

適切な管理下では病害虫の心配は少ないですが、環境が悪いと発生することがあります。

  • ネジラミ: 水やりや日当たりに問題がないのに枯れてきた場合、根にネジラミが発生している可能性があります。これは米粒のような白い楕円形の虫で、根に寄生して水分を吸い取ります。植え替えの際に根をよく観察し、もし発見したら根をきれいに洗い流し、土は全て新しいものに交換します。

  • ホコリダニ: 非常に小さく目視できませんが、発生すると点状の濃いシミができ、進行すると陥没します。

  • ナメクジ: 屋外管理の場合、葉をかじられることがあります。見つけ次第駆除するか、専用の駆除剤を使用します。

  • ヨトウムシ: 日中は土の中に潜み、夜間に活動して葉を食害します。被害が大きい場合は土を掘り返して探す必要があります。

脱皮と脱皮失敗の見分け方

リトープス最大のイベントとも言えるのが、年に一度の「脱皮」です。これは古い葉が割れ、中から新しい葉(新葉)が出てくる神秘的な生長過程であり、リトープスが順調に育っている証でもあります。

脱皮の時期とプロセス

脱皮は主に春先(3月~5月頃)に起こります。気温が上がり始める頃、古い葉(旧葉)の中央にある割れ目が徐々に大きく裂けてきます。その中から、一回り大きくなった新しい葉(新葉)が顔を出します。

新葉は、これから始まる夏の休眠期に備え、旧葉に蓄えられた水分と栄養分を吸収しながらゆっくりと成長します。このプロセスにより、旧葉は徐々に水分を失い、しわしわになっていきます。最終的には、旧葉は乾燥してカサカサの薄皮のようになります。

脱皮中の最大の注意点:水やり厳禁

脱皮が始まったら、水やりは絶対にストップしてください。これはリトープス栽培における最も重要なルールの一つです。

新葉は旧葉から水分をもらって育っています。この時期に外から水を与えてしまうと、新葉も旧葉も水分を過剰に溜め込んでしまいます。その結果、新葉が小さくしか育たない「二重脱皮」(古い皮の中でさらに脱皮が始まるような状態)を引き起こしたり、最悪の場合、株が内側から腐って溶けてしまったりします。

旧葉がしわしわになっていく様子は痛々しく見えるかもしれませんが、これは正常なプロセスです。完全に乾いてカサカサの紙状になるまで、水やりは我慢します。

脱皮失敗とその原因

「脱皮失敗」とは、主に脱皮中の水やりが原因で、二重脱皮が起きたり、株が腐ったりする状態を指します。

また、株自体が弱っている(日光不足、根腐れなど)と、脱皮そのものを行わない年もあります。脱皮をしない状態が続くのは、株が弱っているサインである可能性が高いです。

脱皮後に残ったカサカサの旧葉は、無理に剥がそうとすると新葉を傷つける恐れがあります。水分が残っているとうまく取れないため、完全に乾燥するまで放置し、ピンセットなどで優しく触れて簡単に取れるようになってから取り除きましょう。

開花時期と種の取り方

健康に育ったリトープスは、秋に美しい花を咲かせます。石のような体から鮮やかな花が咲く姿は対照的で、栽培の大きな喜びの一つです。

開花時期と花の特徴

開花時期は主に秋、生育期が本格化する10月~11月頃です。市販されている株の多くはこの時期に開花します(品種により1月頃まで咲くものもあります)。

花は、株の中央の割れ目から蕾(つぼみ)を出し、キクやタンポポに非常に良く似た、花弁の細い花を咲かせます。花の色は主に白、黄色、ピンク、オレンジなどです。

リトープスの花は、日が当たっている日中(朝明るくなってから)に開き、日が落ちて暗くなってくると閉じる性質を持っています。開花期間は短く、一つの花は3~4日程度で咲き終わります。

花の咲き終わりと処理

花が咲き終わると、花びらはすぐに枯れてしまいます。この枯れた花びらを放置しておくと、湿気を含んで株にへばりつき、シミやカビの原因になることがあります。景観を損ねるだけでなく、株の健康にも良くないため、枯れた花びらは早めにピンセットなどで優しく取り除きましょう。

リトープスは一度開花すると、その株(その年の葉)では二度と開花しません。次の開花は、脱皮して新しい株に生まれ変わった後の、翌年の秋となります。

種の取り方と種まき

リトープスは自家受粉(1株だけでの受粉)ができません。種を採るためには、同じ時期に開花している別の株(遺伝的に異なる株)が必要です。

開花中に、2つの異なる株の花から、筆や綿棒、ピンセットなどで花粉を互いに擦りつけ、人工的に受粉させます。受粉が成功すると、開花から3~4ヶ月後に実(種鞘:しゅしょう)ができます。実がぷっくりと膨らみ、褐色になって完全に乾燥したら採取します。この実の中には、粉のように非常に細かい種(1つの実から200~300粒ほど)が入っています。

採取した種は水分が厳禁です。日陰でよく干して乾燥させ、種まきの時期(適期は9月~11月)が来るまで冷蔵庫などで保管します。

種まきをする際は、できるだけ細かい土(配合土をふるいにかけたものなど)を使います。土に種をまいたら、軽く土をかぶせ、発芽するまでは土が常に湿った状態を保つよう腰水などで管理します。発芽後(約2週間ほど)は徐々に水分量を減らし、乾燥に適応させていきます。種まきから1年ほど経過し、子株がしっかりしてきたら鉢上げ(個別の鉢に植え替えること)が可能です。

増やし方は分頭・株分けが基本

リトープスを増やす方法は、大きく分けて「種まき」と「株分け」の二つです。他の多くの多肉植物とは異なり、「葉挿し」や「挿し木」で増やすことはできません。

分頭と株分けの手順

リトープスは脱皮を繰り返すうちに、一つの株から二つの株が生まれる「分頭(ぶんとう)」をすることがあります。これはおおよそ2年に1度のサイクルで見られ、株が順調に育っている証拠です。

「株分け」は、この分頭によって頭が二つ以上に分かれた株を、文字通り物理的に分ける作業です。

  1. 時期: 株分けの適期も植え替えと同じく、生育期が始まる秋頃(9月~11月)です。

  2. 方法: 株を鉢から抜き、土を落とします。分頭してつながっている部分をよく観察し、それぞれの株に均等に根が残るように、清潔なハサミやカッターで慎重に切り分けます。

  3. 乾燥: 切り分けた後は、植え替え時と同様に、切り口を乾燥させるために1週間ほど陰干しします。

  4. 植え付け: それぞれを新しい鉢と土に植え付けます。

株分けできる目安

株分けができるかどうかの目安は、分頭している割れ目にハサミの刃先が入るかどうかで判断できます。割れ目がまだ浅く、分離が不十分な株を無理に分けようとすると、両方の株が枯れてしまうリスクがあります。無理はせず、翌年以降、さらに分離が進むのを待つのが賢明です。

葉挿し・挿し木ができない理由

一般的な多肉植物は、葉や茎を土に挿すことで発根し、新しい株を増やすことができます。しかし、リトープスは茎と葉が高度に一体化・多肉化している特殊な形状をしているため、一般的な葉挿しや挿し木の方法では増やすことができません。

したがって、確実に株を増やしたい場合は、前述の「種まき」で一度にたくさん増やすか、あるいは気長に育てて「分頭」を待ち、「株分け」で少しずつ増やしていくかのどちらかになります。初心者の方にとっては、まずは健康に育てて「分頭」を待つのが最も現実的な増やし方と言えるでしょう。

リトープスの室内での育て方は難しい:まとめ

リトープスの育て方が難しいと感じられる理由と、その対策について解説してきました。最後に、リトープスを枯らさずに育てるための重要なポイントをまとめます。

  • リトープスは「生ける宝石」と呼ばれる多肉植物
  • 種類が非常に多くコレクション性が高い
  • 育て方が難しい主な理由は水やりと温度管理
  • 一般的な植物とは生育サイクルが異なる
  • 秋から春が生育期、夏は休眠期
  • 生育期は日当たりと風通しの良い窓辺で管理
  • 休眠期の夏は直射日光を避けた涼しい半日陰へ
  • 冬は5℃以下にならないよう室内の日当たりで管理
  • 枯れる最大の原因は「水のやりすぎ」
  • 水やりは生育期に土が乾ききってから
  • 夏の休眠期は「断水」が基本
  • 「溶ける」のは高温多湿と水やりによる腐敗
  • 「しわしわ」は水切れ、脱皮、休眠のサインで見極めが必要
  • 脱皮中の水やりは「二重脱皮」や腐敗を招くため厳禁
  • 植え替えは数年に一度、秋に深さのある鉢で行う
  • 肥料はほぼ不要、与えるなら生育期に活力剤を薄めて
  • 土は水はけの良いサボテン・多肉用のものを使う
  • 寄せ植えはリトープス同士で行う
  • 増やし方は「種まき」または「株分け」のみ
  • 葉挿しや挿し木では増やせない
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