会社を休む理由としてインフルエンザを使ってしまったけれど本当にバレるのか不安で仕方がないという方や、診断書や領収書の提出を求められたらどうしようと焦っている方は意外と多いのではないでしょうか。
実は私たちが思っている以上に会社側が嘘を見抜く手段は多く、医療費のお知らせやSNSの履歴などから後日になってバレてしまうリスクも潜んでいます。体調不良で休むこと自体は悪いことではありませんが、インフルエンザという具体的な病名を出してしまったがゆえに診断書の偽造や出勤停止日数の計算といった泥沼にはまってしまうケースも少なくありません。
この記事ではインフルエンザの嘘が会社にバレるメカニズムやばれない方法を探すよりも大切なリスク管理について詳しく解説していきます。
【この記事で分かること】
- 医療費通知や領収書から嘘が発覚する具体的な仕組み
- SNSの投稿やログイン履歴が証拠になる意外な落とし穴
- 診断書の偽造が法的にどのようなリスクを伴うのか
- 会社への報告や休暇中の過ごし方に関する安全な対処法
インフルエンザの嘘は会社にバレる?仕組みを解説

「インフルエンザにかかりました」と報告して会社を休んだものの、実はただの風邪だったり、あるいは単なるズル休みだったりする場合、最も気になるのは「どうやってバレるのか」という点ですよね。会社の人事や労務担当者は、私たちが想像する以上に書類や行動の矛盾点を見ています。特に現代では、紙の書類だけでなくデジタルの痕跡からも嘘が露見するケースが増えています。ここでは、嘘が露見してしまう代表的なパターンと、そのメカニズムについて掘り下げていきます。
インフルエンザの診断書なしだとバレるのか
結論から申し上げますと、会社から「規定なので診断書を提出してください」と言われた時点で、実際に病院を受診していなければ、ほぼ確実にバレることになります。これは単なる書類の不備という問題ではなく、医療と法律の仕組み上、回避不可能な壁が存在するからです。
まず、企業には労働契約法に基づく安全配慮義務があり、感染症の蔓延を防ぐために従業員の健康状態を把握する正当な権利を持っています。そのため、多くの企業の就業規則では「3日以上の欠勤」や「感染症による欠勤」の場合に診断書の提出を義務付けています。ここで「病院に行ったけれど、診断書をもらうのを忘れました」という言い訳をする方がいますが、これは非常に苦しい弁明になります。
なぜなら、会社側が「では、病院の領収書か、薬の説明書(薬剤情報提供書)を見せてください」と代替案を出してきた瞬間に詰んでしまうからです。また、「診断書の発行には3,000円〜5,000円程度の費用がかかるため、金銭的な理由でもらいませんでした」という主張は、一般的には理解される余地がありますが、もし会社が「費用は会社で負担するから、今からでも病院に行って書いてもらってきて」と言ってきた場合、逃げ道は完全に塞がれます。
さらに重要なのが、医師法第19条の存在です。医師は診察していない患者に対して診断書を発行することはできません。つまり、後日あわてて病院に行っても、「数日前にインフルエンザでした」という過去の事実に対する診断書を、検査なしで書いてもらうことは医学的にも法的にも不可能なのです。結果として、「診断書が出せない=病院に行っていない=虚偽報告だった」という図式が成立してしまいます。
最近は厚生労働省の方針で、医療機関のひっ迫を避けるため、企業に対して「一律に診断書や治癒証明書を求めないように」という要請が出ています。これを根拠に「国が不要と言っているので病院には行きませんでした」と主張することは論理的には可能ですが、あくまで「要請」であり法的強制力はないため、会社の就業規則が優先されるケースも多いです。普段の勤務態度が真面目であれば通るかもしれませんが、疑われている状況では火に油を注ぐ結果になりかねません。
医療費のお知らせで会社に嘘がバレる理由
現行犯ではバレなくても、数ヶ月後、あるいは一年後に突然嘘が発覚する「時限爆弾」のようなリスクをご存知でしょうか?それが、健康保険組合から加入者(従業員)に対して定期的に送付される「医療費のお知らせ(医療費通知)」です。
この通知には、あなたが健康保険証を使って受診した医療記録が一覧で記載されています。具体的には、「受診年月」「医療機関の名称」「診療区分(入院・通院・歯科・調剤など)」「日数」「医療費の総額」などが明記されます。ここには具体的な「病名」までは記載されないことが一般的ですが、人事労務のプロが見れば、ここから「嘘」を見抜くことは容易です。
例えば、あなたが「12月10日から15日までインフルエンザで休みます。A病院を受診しました」と会社に報告していたとしましょう。しかし、数ヶ月後に会社に届いた(あるいは会社経由で配布される)医療費通知の「12月」の欄を確認すると、医療機関の受診記録が一行も存在しない、あるいは報告した病院名とは全く異なる歯科医院の記録しかない、といった矛盾が生じます。
「病院には行きました」と報告していたのに、公的な記録であるレセプトデータ(診療報酬明細書)に基づいた通知に記録がないということは、「保険証を使って受診していない=病院に行っていない」という動かぬ証拠になります。「自費診療で行ったから載っていない」という言い訳も考えられますが、インフルエンザの治療をわざわざ10割負担の高額な自費で受ける人はまずいないため、逆に怪しまれる原因になります。
この通知によって嘘が発覚するタイミングは、受診から最短でも3ヶ月後、遅ければ半年以上先になります。その頃には本人も嘘をついたことすら忘れているかもしれませんが、会社側が人事考課や昇進の審査、あるいは賞与の査定時にバックグラウンドチェックとしてこれを確認した場合、「虚偽申告をする信頼できない社員」というレッテルを貼られることになります。
近年は個人情報保護の観点から、医療費通知を会社経由ではなく、従業員の自宅へ直接郵送(親展)する健康保険組合も増えています。この場合、会社が中身を見ることは原則できません。しかし、協会けんぽなどの一部や、独自の健保組合を持つ大企業では、依然として事業所経由で配布されるケースもあり、完全に安心できるわけではないのです。
領収書や薬局の明細書からバレるケース
診断書の取得コストを考慮し、会社によっては「領収書」や「診療明細書」、あるいは「調剤明細書」の提出で欠勤を認めてくれる場合があります。「診断書じゃなくていいなら、適当な風邪薬の領収書でも出しておけばバレないだろう」と考えるのは非常に危険です。これらの書類は、実は診断書以上に雄弁に「治療の実態」を語ってしまうからです。
特に注意が必要なのが「診療明細書」です。領収書には金額しか書かれていませんが、明細書には「初診料」「検査料」「投薬料」といった項目ごとに、算定された診療報酬点数と、具体的な検査名や薬剤名が記載されていることが多いのです。
人事担当者が基礎的な医療知識を持っている場合、以下のポイントをチェックします。
まず、「インフルエンザ抗原検査(またはPCR検査)」の実施料が含まれているか。もし検査料の記載がなければ、「検査もしないでどうやってインフルエンザと断定したのか?」という疑問を持たれます。
次に、処方された薬剤の内訳です。インフルエンザと診断された場合、通常は「タミフル」「イナビル」「ゾフルーザ」「リレンザ」といった抗インフルエンザウイルス薬が処方されます。もし明細書にこれらの薬剤がなく、一般的な解熱鎮痛剤(カロナールやロキソニン)や、風邪症状を和らげるPL配合顆粒、抗生物質などしか記載されていなければ、「これはただの風邪だったのではないか?」と推測されてしまいます。
さらに、薬局でもらう「薬の説明書(薬剤情報提供書)」やお薬手帳のコピーを求められた場合も同様です。そこには薬の写真や効能がはっきりと書かれているため、ごまかしようがありません。「インフルエンザですが、薬はもらいませんでした」という主張も、高熱で苦しんでいる患者に対して医師が何も処方しないというのは極めて不自然であり、通用しないでしょう。
| 書類の種類 | 記載される主な内容 | バレるリスクと検証ポイント |
|---|---|---|
| 診断書 | 病名、療養期間、医師の署名 | 最も確実だが、偽造した場合は有印私文書偽造罪となり即座に犯罪行為として認定される。 |
| 領収書 | 受診日、医療機関名、支払金額 | 通院した事実は証明できるが、病名までは不明。ただし日付の矛盾はごまかせない。 |
| 診療明細書 | 検査名称、薬剤名称、診療点数 | 「抗インフルエンザ薬」の有無や「検査実施」の有無から、病名の真偽を医学的に推測されやすい。 |
| 調剤明細書 | 処方された具体的な薬の名前 | 特効薬(タミフル等)が処方されていない場合、「ただの風邪」であることが露見する。 |
SNSや行動の矛盾から仮病がバレる瞬間
書類上の辻褄を完璧に合わせたとしても、人間の心理的な隙や、デジタルツールに残る行動履歴(デジタルフットプリント)から嘘が発覚するケースが後を絶ちません。むしろ現代においては、書類よりもSNSや何気ない行動からバレる確率の方が圧倒的に高いと言えるでしょう。
まず、最も警戒すべきはSNSの「タグ付け」や「映り込み」です。自分自身は警戒して投稿を控えていても、一緒に遊びに行った友人が「〇〇とランチ!」と投稿し、あなたをタグ付けしてしまえば一発アウトです。たとえタグ付けされなくても、写真の背景にあなたの私物や特徴的な服装が写り込んでいれば、見る人が見れば分かります。特にInstagramのストーリーズは「24時間で消えるから大丈夫」と油断しがちですが、スクリーンショットを撮られれば証拠として半永久的に残ります。
次に盲点となるのが、オンラインサービスのログインステータスです。Discord、Steam、PlayStation Network(PSN)、Nintendo Switch Onlineなどのゲーム関連サービスでは、デフォルト設定で「オンライン」「プレイ中」といったステータスがフレンドに公開されています。もし会社の同僚とフレンド登録をしている場合、「高熱で寝込んでいるはずの時間帯に、FPSゲームを5時間連続でプレイしている」という通知が同僚の画面に表示されることになります。これは「元気じゃん」と判断される決定的な証拠です。
また、LINEの返信速度や内容にも注意が必要です。本当に高熱でうなされている時は、スマホを見るのも辛いものです。しかし、欠勤連絡をした直後に、同僚からの業務連絡や雑談LINEに対して即座に、しかも長文で元気なスタンプ付きの返信をしてしまうと、「実は暇なんじゃないか?」という疑念を抱かれます。逆に、一切連絡が取れなくなるのも不自然ですが、普段通りのテンションでSNSに「いいね」を押したり、足跡を残したりする行為は、監視されている意識を持つべきです。
そして最後に、出社後の「会話」の矛盾です。「どこの病院に行ったの?」「どれくらい待った?」「インフルエンザA型だった?B型だった?」といった同僚からの何気ない世間話に対し、具体的なエピソードを即答できないと、嘘の空気感が伝わってしまいます。嘘をつき通すには、架空の病院体験談まで詳細に設定を作り込む必要があり、その精神的ストレスは計り知れません。
検査しないでインフルエンザと嘘をつくリスク
「病院に行くとお金もかかるし、待合室で待たされるのも辛い。どうせ熱があるんだから、検査キットを使わずに症状だけで『インフルエンザです』と会社に報告してしまおう」と考える方もいるかもしれません。あるいは、市販の風邪薬で治そうとするケースもあるでしょう。
確かに、インフルエンザの流行期においては、医師の判断により検査を行わず、臨床症状(急激な発熱、関節痛など)と周囲の感染状況のみで診断を下す「みなし陽性」という運用が認められています。しかし、これはあくまで「医師が医学的知見に基づいて下す診断」のことであり、素人が自己判断で「私はみなし陽性だ」と名乗って良いものではありません。
この「検査なし報告」の最大のリスクは、会社との認識のズレにあります。会社側は「インフルエンザ=感染症=医師による診断と管理が必要」という前提で動きます。そのため、「みなし陽性と診断されました」と報告した場合、会社からは「どこの医療機関で診断されたのか」「医師からの出勤停止指示はいつまでか」を確認されることになります。
もしここで「病院には行っていません。自己判断です」と答えてしまえば、「それはインフルエンザとは言わない」と一蹴されるでしょう。逆に「〇〇病院に行きました」と嘘をつけば、前述した医療費通知や領収書の提出を求められた際に完全に詰みます。また、仮に市販の検査キット(研究用など精度の低いもの)で陽性が出たとしても、企業によっては「医療用キット」の結果、あるいは「医療機関での確定診断」以外は認めないという就業規則を持っている場合も多いため、結局は病院に行かざるを得なくなります。
検査を受けないまま「インフルエンザ」という確定的な病名を会社に伝えることは、自らハードルを上げ、後から引くに引けない状況を作り出す自爆行為に近いのです。
インフルエンザが会社にバレる前に知るべき対処法

もし、あなたが今まさに「嘘をついてしまった」あるいは「これから休もうとしている」のであれば、最悪の事態を避けるための知識が必要です。ここでは、法的なリスクや金銭的な影響、そして会社とのトラブルを避けるための現実的な対処法について解説します。
会社を休む理由でインフルエンザを使う危険性
個人的な意見として、ズル休みや単なる体調不良の理由として「インフルエンザ」という具体的な病名を出すのは、あまりにもリスクが高すぎるのでおすすめしません。
理由はシンプルで、「証明責任」が発生しやすいからです。「体調不良」や「発熱」であれば、1〜2日で復帰しても不自然ではありませんし、診断書を求められる可能性も低いです。しかし、「インフルエンザ」と言ってしまった瞬間に、以下の縛りが発生します。
- 法律(学校保健安全法に準ずる)に基づいた出勤停止期間(約5日間)を守る必要が出てくる。
- その期間、外出もできず、SNSも更新できず、家に籠もり続けなければならない。
- 会社によっては治癒証明書や陰性証明書の提出が必須になる。
「風邪」や「私用」にしておけば良かったものを、病名を詐称することで自らを追い込んでしまうのです。
休んだ期間の給料や傷病手当金の仕組み
インフルエンザ(季節性)で会社を休んだ場合、その期間の給与保証はどうなるのでしょうか。ここを誤解していると、後で給与明細を見て青ざめることになります。
基本原則として、ノーワーク・ノーペイ(働かざる者食うべからず)の原則が適用されるため、会社を休んだ期間の給料は発生しません。一般的には、本人が保有している「有給休暇」を消化して給与を確保するか、有給がない場合は「欠勤」としてその日数の分だけ給与が減額されることになります。
例外として、もし「本人は働ける状態(医師が就業可能と判断)」であるにもかかわらず、会社側が「感染拡大が怖いから、念のため休んでくれ」と業務命令として休業を命じた場合は、労働基準法第26条に基づく「使用者の責に帰すべき事由」となり、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務が生じる可能性があります。しかし、インフルエンザのような一般的な感染症の場合、多くの企業では就業規則で「出勤停止」と定めており、これは「就労不能」扱いとなるため、休業手当の対象外となるケースがほとんどです。
また、連続して3日以上休み、4日目以降も休むことができない状態が続く場合、健康保険から「傷病手当金」が支給される制度があります。給与の約3分の2が補償されるありがたい制度ですが、これを受け取るためには「療養担当者(医師)」による意見書、つまり「労務不能であったことの証明」が申請書に必須となります。
ここが重要なポイントですが、仮病で休んでいる場合、当然ながら医師は「労務不能」という証明を書くことはありません。したがって、嘘をついて休んでいる場合は、傷病手当金を受け取ることは物理的に不可能です。もし医師の署名を偽造して申請すれば、それは詐欺罪および有印私文書偽造罪という重大な犯罪になります。
熱が下がった後の出勤停止期間をごまかすリスク
インフルエンザには、学校保健安全法で定められた明確な出席停止期間の基準があります。それは「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」というものです。多くの企業がこの基準を就業規則で準用し、出勤停止期間としています。
もし仮病で「インフルエンザにかかった」と報告してしまった場合、たとえ翌日に「元気になったから会社に行きたい(遊びに行きたい)」と思っても、この「発症後5日間」という縛りに自ら拘束されることになります。会社側は「まだ出勤停止期間中だから来てはいけない」と指示するでしょう。
ここで焦って「いや、もう完全に治ったんです。熱もありません」と言って早期に出社しようとすると、逆に怪しまれます。「インフルエンザがたった1日で完治するわけがない」「まだウイルスを排出している可能性があるのに、出社してくるなんて非常識だ」と、嘘がバレるだけでなく、コンプライアンス意識の欠如を問われることになります。
逆に、本当にインフルエンザにかかっているのに、有給がもったいない、仕事が忙しいという理由で熱を隠して出社し、結果として同僚に感染させてしまった場合も深刻です。もし社内で集団感染(クラスター)が発生し、業務が停止するような事態になれば、安全配慮義務違反の観点から懲戒処分を受けたり、最悪の場合は民事上の損害賠償を請求されたりするリスクもゼロではありません。期間をごまかす行為は、自分の首を絞めるだけです。
コロナとインフルエンザの違いと会社への報告
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したことで、法的な扱いは季節性インフルエンザと同等になりました。しかし、企業の現場では、依然としてコロナとインフルエンザで対応フローを分けているケースも少なくありません。
例えば、コロナの場合は「専用の報告フォームへの入力」や「濃厚接触者の確認」といった独自ルールが残っている場合があります。また、インフルエンザであれば「診断書」を求めるが、コロナであれば「検査キット(医療用)の陽性反応が出た写真」で可とするなど、提出すべき証拠書類が異なることもあります。
ここで注意したいのが、適当な嘘をついて報告した後に、会社から「では、抗原検査キットの結果画像を送ってください」と言われた場合です。インフルエンザとコロナを混同し、「とりあえず流行り病と言っておけば休めるだろう」と安易に考えていると、指定された証拠を出せずに詰んでしまいます。
会社への報告を行う際は、曖昧にせず以下の点を明確に伝えることが、無用なトラブルや追求を避けるコツです。
1. 診断の根拠:「医療機関を受診して医師に診断された」のか、「市販の検査キットで陽性が出た」のか、「症状からの自己判断」なのか。
2. 病名:「インフルエンザA型」「コロナ陽性」「発熱(病名不明)」の区別。
3. 指示内容:医師から「いつまで休め」と言われたか。
診断書偽造は犯罪?解雇になる可能性
記事の最後として、絶対に越えてはいけない一線について警告しておきます。それは「診断書や領収書の偽造」です。
インターネット上には診断書のテンプレート画像が落ちていたり、画像編集ソフトを使えば日付や名前を書き換えることが簡単にできそうに見えたりします。「バレなければいい」「たかが紙切れ一枚」という軽い気持ちで手を出してしまう人がいますが、これは会社の内規違反レベルの話ではなく、刑法に触れる犯罪行為です。
具体的には、医師の署名や印鑑がある診断書を偽造した場合、「有印私文書偽造罪」(刑法第159条)が成立します。法定刑は3ヶ月以上5年以下の懲役であり、罰金刑はありません。つまり、起訴されれば執行猶予がつかない限り刑務所行きとなる重罪です。さらに、その偽造した診断書を会社に提出した時点で「偽造有印私文書行使罪」(刑法第161条)も成立します。
加えて、その偽造診断書を使って有給休暇の給与を受け取ったり、傷病手当金を不正受給したりすれば、会社や保険組合を騙して金銭を詐取したとして「詐欺罪」(刑法第246条、10年以下の懲役)にも問われます。
会社側としても、単なる無断欠勤であれば「減給」や「出勤停止」といった懲戒処分で済む可能性がありますが、文書偽造という犯罪行為を行って会社を欺いたとなれば、信頼関係は修復不可能とみなされ、最も重い処分である「懲戒解雇」を選択する正当な理由となります。懲戒解雇になれば退職金は支給されず、離職票にも「重責解雇」と記載されるため、再就職も極めて困難になります。たかが数日の休暇のために、人生を棒に振るリスクを負う価値はどこにもありません。
インフルエンザが会社にバレるリスクの総括
ここまで解説してきた通り、「インフルエンザで会社を休む嘘がバレるか」という問いに対する答えは、「短期的にはごまかせても、長期的・客観的な証拠によってバレるリスクが極めて高い」というのが現実です。
医療費通知の空白、領収書の不整合、SNSの履歴、そして何よりあなた自身の行動の矛盾。これら全てを完璧に隠し通すには、多大な労力と精神的なストレスがかかります。もし、あなたが既に嘘をついてしまって診断書の提出を求められているなら、これ以上傷口を広げないためにも、正直に「受診していません」「診断書はありません」と伝えるのが、結果として最もダメージの少ない選択肢となるでしょう。
そして、これから休もうと考えている方は、わざわざ証明のハードルが高い「インフルエンザ」という嘘をつかず、「体調不良」や「私用」として休むことを強くおすすめします。自分を守るためにも、不要な嘘はつかないことが最大のリスクヘッジなのです。
この記事は一般的な情報を提供するものであり、個別の労務問題や法的判断を保証するものではありません。深刻なトラブルに発展しそうな場合は、弁護士や社労士などの専門家、または労働基準監督署へご相談ください。

