教員免許を持ってるだけの割合は？価値と活用法を徹底解説

「そういえば、教員免許を持っているけど、使っていないな…」「周りにも持っているだけの人がいるけど、実際の割合はどれくらいなのだろう？」

あなたも一度は、こんな疑問を抱いたことがあるかもしれません。大学時代に取得した教員免許が、引き出しの奥で眠ったままになっている方は少なくないのです。

この記事では、教員免許を持ってるだけの人の割合が一体どのくらいなのか、その取得者数の推移と持っている人の割合はどのようになっているのかを、公的なデータに基づいて解説します。

大学を卒業するだけで教員免許は取れるのか、誰でも簡単に取れる資格なのか、そして資格認定試験の合格率はどの程度なのか、といった取得に関する実態にも迫ります。また、教員免許を取るにはどんな方法があるのか、取得には最低何年かかるのかという基本的な情報から、保険として一応とるのは有効なのか、教員免許を持ってるだけのメリットを解説し、実際のところ教員免許は役に立つのかという本質的な価値についても深く掘り下げていきます。

中には、教員免許は高校のみだと不利になるケースもあり、後から教員免許をとればよかったという失敗や後悔をしないためにも、正しい知識を持つことが大切です。この記事を通じて、教員免許を持ってるだけの割合を知り活用するための一歩を踏み出しましょう。

教員免許を持ってるだけの割合と取得の実態

取得者数の推移と持っている人の割合は？

日本全国で教員免許を保有している人の数は、およそ523万人にのぼると推計されています。しかし、その中で実際に教員として学校現場で働いているのは、約109万人にとどまっているのが現状です。これは、全体の約2割にしか過ぎません。

つまり、残りの約8割にあたるおよそ414万人は、免許を持ちながらも教職には就いていない「ペーパーティーチャー」ということになります。このデータは2004年時点の文部科学省の推計に基づきますが、担当者によると現在もこの比率に大きな変動はないと考えられています。

近年、教員不足が全国的な課題となる一方で、膨大な数の免許保有者が潜在的に存在しているという構図が浮かび上がります。この大きなギャップこそが、現在の教育現場が抱える課題の一つを象徴していると言えるでしょう。

大学を卒業するだけで教員免許は取れる？

「大学を卒業すれば教員免許がもらえる」と考える方がいるかもしれませんが、これは正確ではありません。教員免許を取得するためには、大学卒業という学士の学位要件に加えて、国が定めた「教職課程」の科目を履修し、必要な単位を全て修得する必要があります。

教職課程には、教育の基礎理論を学ぶ科目のほかに、各教科の専門知識や指導法に関する科目が含まれます。そして、これらの座学だけでなく、教育実習や介護等体験といった実習も必須です。特に教育実習は、多くの大学で4年次の数週間にわたって行われ、実際に学校現場で子どもたちと向き合いながら、授業計画の立案や実践的な指導を経験します。

このように、大学を卒業するだけでは教員免許は取得できず、専門的な学習と実践的な訓練を積み重ねて、初めて各都道府県の教育委員会に授与を申請できる資格なのです。履修漏れや単位不足があれば、たとえ大学を卒業できても免許は取得できません。

誰でも簡単に取れる？資格認定試験の合格率は？

教員免許の取得は、決して誰でも簡単というわけではありません。大学の教職課程を経て取得するのが一般的ですが、その過程では多くの単位取得や教育実習など、相応の努力が求められます。

また、正規教員として働くためには、免許を持っていることを前提として、さらに各自治体が実施する教員採用試験に合格しなければなりません。この採用試験の倍率は、決して低くはありません。例えば、小学校でも4～5倍、中学校や高校では教科によって7～10倍以上になることもあり、厳しい競争を勝ち抜く必要があります。

社会人などが大学に通わずに小学校教員の免許取得を目指せる「小学校教員資格認定試験」というルートもありますが、こちらも難関です。過去には合格率が1割程度だった時期もあり、近年は2～3割で推移しているものの、依然として簡単な試験ではないことが分かります。特に1次の筆記試験が難しく、ここで多くの受験者がふるいにかけられるのが実情です。

これらの事実から、教員免許の取得や正規教員になるまでの道のりは、決して平坦ではないと考えられます。

教員免許を取るにはどんな方法があるのか

教員免許を取得するためのルートは、一つだけではありません。主に、以下の3つの方法が挙げられます。

大学の教職課程を履修する

最も一般的な方法です。大学や短期大学に設置されている教職課程を履修し、卒業に必要な単位と合わせて教職に関する単位を修得します。四年制大学を卒業すれば一種免許状、短期大学を卒業すれば二種免許状が基本となります。大学院の修士課程を修了すると、さらに上位の専修免許状を取得できます。

大学の通信教育課程で学ぶ

社会人になってから免許取得を目指す場合に主流となる方法です。働きながらリポート作成やオンライン授業で単位を修得します。ただし、この方法でも教育実習は必須であり、一定期間仕事から離れる必要があるため、計画的な履修が不可欠です。

教員資格認定試験に合格する

大学の教職課程を経ていない人を対象とした試験で、文部科学省が実施しています。この試験に合格すれば、教員免許状を取得できます。現在、小学校教員の免許状などが対象となっています。ただし、前述の通り合格率は高くなく、十分な試験対策が求められます。

これらのルートの中から、自身の学歴やライフステージに合わせて最適な方法を選択することが、免許取得への第一歩となります。

教員免許の取得には最低何年かかる？

教員免許を取得するために必要な期間は、選択するルートによって異なります。

最も一般的な、大学で教職課程を履修する場合、基本的には大学の修業年限と同じ期間が必要です。つまり、四年制大学であれば4年間、短期大学であれば2年間で取得を目指すことになります。この期間内に、卒業要件と教職課程の要件を両方満たす必要があります。

社会人などが通信制大学で免許取得を目指す場合は、約2年間で必要な単位を修得するのが主流です。ただし、仕事や家庭と両立しながらの学習となるため、個人のペースによってはそれ以上の期間を要することもあります。最大の関門は、2週間から4週間にわたる教育実習で、この期間、連続して休暇を取得できるかが大きな課題となります。

教員資格認定試験には特定の学習期間は定められていませんが、難易度が高いため、合格には通常1年以上の集中的な学習が必要になると考えられます。

いずれのルートを選択するにしても、教員免許は短期間で簡単に取得できるものではなく、年単位での計画的な学習と努力が求められる資格です。

教員免許を持ってるだけの割合から考える価値

教員免許を持ってるだけのメリットを解説

教員免許を保有していることには、たとえ現在教職に就いていなくても、いくつかのメリットが考えられます。

第一に、いつでも教員採用試験を受験できる資格があるという点です。民間企業でキャリアを積んだ後や、子育てが一段落した後など、人生の様々なタイミングで教員という道を選択肢に入れられます。社会人経験者向けの特別な採用選考枠を設けている自治体も増えており、新たなキャリアを築くきっかけになり得ます。ただし、免許状には10年の有効期間があり、更新手続きが必要なことは念頭に置く必要があります。

第二に、臨時的任用教員（常勤講師）や非常勤講師として学校現場で働く道が開かれることです。正規教員が産休や病気で休む際の代替など、教員不足が深刻化する中で講師の需要は高まっています。すぐに教壇に立つことで、自身の適性を見極めたり、教育現場の経験を積んだりすることが可能です。

最後に、教育関連の仕事に就く際に、自身の知識や意欲をアピールする材料になることです。塾講師や家庭教師、児童指導員などの職種では、教員免許の保有が必須ではないものの、教育に関する一定の知識を持っていることの証明となり、採用の際に有利に働く場合があります。

保険として「一応とる」のは有効なのか

「いざという時の保険として教員免許を取っておこう」と考える学生は少なくありません。しかし、この「保険」が期待通りに機能するかは、慎重に考える必要があります。

まず、「講師なら簡単になれる」という考えは必ずしも正しくありません。学校側は、即戦力となる経験者を優先して採用する傾向があります。教職経験のないペーパーティーチャーが、希望するタイミングですぐに講師の職を得られる保証はないのが実情です。実際、講師希望者のうち実際に勤務できるのは3～4割程度というデータもあり、未経験者であればその可能性はさらに低くなるでしょう。

また、講師の待遇も理解しておくべき点です。常勤講師は正規教員に近い給与を得られますが、多くは1年契約の非正規雇用です。一方、非常勤講師は授業単位の時給制で、授業準備や採点などの時間は無給となる場合が多く、年収にすると100～150万円程度になることも珍しくありません。これだけで生計を立てるのは困難なケースもあるのです。

さらに、学生にとっては教育実習の時期が就職活動の佳境と重なるという問題もあります。企業への就職を第一に考えている場合、教育実習が大きな負担となり、就職活動に不利に働く可能性も否定できません。

これらの点を踏まえると、教員免許を単なる「保険」と捉えるのは安易であり、取得にかかる労力や機会費用も考慮した上で判断することが大切です。

実際のところ教員免許は役に立つのか

教員免許が実際に役に立つかどうかは、その人のキャリアプランや活用方法によって大きく変わってきます。

もちろん、公立・私立を問わず学校の正規教員を目指すのであれば、教員免許は絶対に必要な入場券であり、これ以上ないほど役に立つ資格です。講師として働く場合にも、免許は必須の条件となります。教員不足を背景に、埼玉県のようにペーパーティーチャーを対象としたセミナーを開催し、臨時的任用教員や非常勤講師として積極的に掘り起こそうとする自治体も出てきており、免許保有者への需要は確実に存在します。

一方で、塾講師や予備校講師といった民間の教育産業では、教員免許の有無が採用を左右することはほとんどありません。求められるのは、あくまで生徒の成績を上げる指導力や実績だからです。

しかし、教育分野以外でも免許が役立つ場面はあります。例えば、児童福祉施設などで働く「児童指導員」の任用資格の一つに、教員免許の保有が含まれています。教員免許があれば、福祉分野での実務経験がなくても児童指導員として働くことが可能です。

このように、教員免許は学校の先生になるための資格であると同時に、教育や福祉に関連する多様なキャリアへの扉を開く可能性を秘めた、汎用性のある資格と考えることもできるでしょう。

教員免許は高校のみだと不利になるケース

教員免許は、校種（小学校・中学校・高校など）や教科によって、その需要や採用の状況が異なります。特に、高等学校の免許のみを保有している場合、状況によっては不利になる可能性がある点を認識しておく必要があります。

一つの理由は、採用倍率の高さです。中学校や高校の免許は、比較的多くの大学の学部で取得できるため、免許保有者の数が多くなります。その結果、教科によっては採用試験の倍率が10倍を超えることもあり、非常に狭き門となっています。

また、小学校では原則として一人の教員が全教科を教えるため、「小学校教諭」の免許が求められます。教員不足が深刻な小学校現場では、中学校や高校の免許を持つ人に「臨時免許状」を交付して欠員を補充するケースが増えていますが、これはあくまで例外的な措置です。最初から小学校での勤務を希望する場合、高校の免許だけでは直接的なアドバンテージにはなりにくいのが現実です。

逆に、小学校の免許を持っていれば、多くの教科を指導できる素養があると見なされ、活用の幅が広がる可能性があります。もちろん、専門教科を深く追求したい場合は高校の免許が不可欠ですが、将来の選択肢の広さを考える上では、こうした校種による違いも考慮に入れておくとよいでしょう。

「教員免許をとればよかった」と後悔しないために

将来、教員という職業に少しでも興味があるのなら、「学生のうちに教員免許をとればよかった」と後悔しないための判断が大切になります。

社会人になってから教員免許を取得しようとすると、多くの困難が伴います。最大のハードルは、数週間にわたる教育実習です。連続休暇の取得が難しい企業がほとんどであるため、免許取得のために一度退職せざるを得ないケースも少なくありません。また、働きながら通信教育で単位を取得するにしても、時間的・経済的な負担は決して軽くありません。

こうした理由から、教員になる可能性を少しでも考えているのであれば、在学中に教職課程を履修しておくことには大きなメリットがあります。

一方で、教員になるつもりがないにもかかわらず、親に勧められたなどの理由で安易に教職課程を選択することも考えものです。前述の通り、教育実習は就職活動に影響を与えますし、本来であれば他の資格の勉強や自己分析に充てられるはずの貴重な時間を費やすことになります。

重要なのは、自分自身のキャリアについて真剣に考え、教員という選択肢が自分にとってどの程度の位置づけにあるのかを自問自答することです。その上で、教職課程を履修するかどうかを決断すれば、将来的な後悔を最小限に抑えることができるでしょう。

教員免許を持ってるだけの割合を知り活用しよう

この記事を通じて、教員免許を持っているだけの方が約8割にも上る現状や、免許取得の実態、そしてその価値について解説してきました。多くの人が免許を活かしきれていない一方で、教員不足の現場ではその力が求められています。あなたの持つ免許も、決して無駄なものではありません。

以下に、本記事の要点をまとめます。